ウクライナに出兵するロシアの創造的言い訳
あくまで越境攻撃を否定し続けるロシア不条理な「ポストモダン型戦争」の出口はどこに
休暇中だった? ウクライナ領内で拘束されたロシア兵(上写真) Valentyn Ogirenko-Reuters
ロシア政府とウクライナ東部の親ロシア派武装勢力は、一貫してロシア軍の関与を否定してきた。戦車や対空ミサイルはウクライナ政府軍から奪ったもので、武装勢力に加わっているロシア人はロシア政府のコントロールが利かない民間人だ、と。
だが、ここにきてロシアはウクライナ東部への軍事介入をエスカレートさせており、同時に彼らの「創造的説明」にもますます磨きが掛かってきた。
ロシア国営テレビによると、現在ウクライナには数千人のロシア兵がいるが、彼らは侵略軍ではなく、休暇中の兵士らしい。ウクライナ南東部では最大4000人のロシア人が戦闘に加わっていると、「ドネツク人民共和国首相」を名乗る親ロシア派のアレクサンドル・ザハルチェンコ司令官は同テレビに語った。「彼らは休暇をビーチではなく、自由のために戦う兄弟たちと過ごすことを選んだのだ」
NATOが公開した衛星画像やYouTubeの投稿動画には、ロシア軍の車列らしきものがはっきり映っている。それでも軍事介入の事実を否定し続けるロシア政府が次にどんな「創造的説明」を持ち出してくるか、見当も付かない。
一方、ウクライナはNATO加盟の方針をあらためて打ち出した。NATO条約第5条には、加盟国への武力攻撃には全加盟国が共同で反撃すると定めた集団防衛条項がある。だが、正式に加盟が承認されるのは少なくとも数年先とみられている。
7月中旬に、マレーシア航空機が撃墜された直後には、ウクライナ政府軍が親ロシア派の支配地域を次々と奪回し、武装勢力の鎮圧は時間の問題に見えた。現在もウクライナ軍は親ロシア派の拠点ドネツクとルガンスクに迫っているが、南東部の国境地帯ではロシア軍が新たな戦闘を仕掛けているもようだ。その間もプーチン大統領はロシア軍の直接的関与を否定し続け、ウクライナのポロシェンコ大統領と話し合いを行っていた。