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ペルー

マチュピチュの神秘に迫る危機

2014年7月23日(水)17時03分
シメオン・テゲル

観光客数は倍になる

 高級ホテルを建てれば、トウモロコシ畑を耕すよりはるかに多くの収益が見込める。サリナスの予想では、現在は年間100万人の観光客が空港建設で10倍に増える。ユネスコの専門家が聞いたら、パニックを起こしそうな数字だ。

 だからこそ、遺跡の保護も重視すべきだとサリナスは言う。遺跡の入り口を複数作る、道路より鉄道のルートを増やす、観光客の滞在時間を2〜3時間に制限する、遊歩道を設置するなどの措置だ。「私たちペルー人がこれらの問題に対処し、遺跡を管理しなければならない。持続可能な発展が必要だ。観光産業は地元の人と、インフラを建設する投資家の両方に利益をもたらせるはずだ」

 空港建設のために先祖伝来の家を売ったウーゴ・アウカクシは昔を懐かしむ。
「羊、鶏、豚、キヌア(雑穀)、ジャガイモなど必要な物はなんでもあった。現金は必要なかった」。新空港は雇用をもたらすはずだから彼も賛成しているが、地元の人が本当に空港関連の仕事に採用してもらえるか、心配になってきたという。

 スペイン人の残虐な侵略から約500年。今、新たな侵略者に不安を感じているのはアウカクシだけではない。

From GlobalPost.com特約

[2014年7月15日号掲載]

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