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米外交

イラク支援は「必要最低限」、オバマの冷徹な計算

2014年7月1日(火)16時11分
ウィリアム・サレタン

4)マリキは去るべし 

オバマはイラクのマリキ首相の進退に口出しすることを避けている。マリキを信頼しているかという質問に対しては、イラクの現政権はスンニ派の信頼を得られず、シーア派、スンニ派、クルド人の亀裂はこの2年間に一層深まったと指摘。そのため現政権はISISの脅威に対処できないとして、不信感をあらわにした。

5)石油確保が大きな狙い 

民主的な国家の建設というブッシュの大義を一部は継承しつつも、オバマはアメリカの利己的な介入動機を率直に述べた。介入の得失を評価する際、エネルギーの安定供給の確保は今も重要な要因になるという。

6)先制攻撃の余地を残す 

オバマはISISなどイスラム過激派の「安全な避難先をなくすことがアメリカの利益になる」と述べた。武装勢力の「軍事力と勢力が拡大すれば、ヨルダンなど近隣の同盟国がさらなる危険にさらされるばかりか、ヨーロッパ、ひいてはアメリカにも大きな危険が及ぶ可能性がある」。

 脅威がエスカレートした場合、どの時点で、どの程度、米軍が介入するかは明言しなかったが、軍事力の行使に含みを持たせた。

 今回の発表は冷徹なリアリズムをうかがわせる。イラク侵攻は無謀な介入だったとオバマは見ている。ISISは地域の安定と石油の供給を脅かすばかりか、アメリカをテロの脅威にさらしかねず、それに対しては軍事力の行使も辞さないが、行使は必要最低限にとどめるべきだとの考えだ。イラクの再建はイラクの人々の仕事であり、そのためにマリキが切られても、オバマは一切同情しないだろう。

© 2014, Slate

[2014年7月 1日号掲載]

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