「自信なき大国」中国の未来
──今後の日中関係はどうなりますか?日本はどう中国に向き合うべきでしょうか。
私は2010年に日本の雑誌に1本の記事を書いたのですが、その中で民主党政権の政策を批判しました。当時民主党や小沢一郎氏はアメリカと距離を置き、中国と接近し、在日米軍基地をなくすべきというような主張をしていたのですが、中国は民主化していない危険な強権国家です。確かにアメリカも強権国家ですが、あえていえばアメリカは良い強権国家で、中国は危ない強権国家。私は日本がアメリカと中国の間で等距離外交をするなどあってはならないと思います。日本は民主国家の陣営に立ち、民主化して初めて中国とは等距離を取るべきです。
私も日中が友好であることを望みますが、その相手はあくまで民主的な中国で、専制国家の中国ではない。日本は第二次大戦の歴史ゆえ、アメリカやヨーロッパ諸国のように中国の人権問題を批判しません。ただ、関係は悪化している。逆にアメリカやヨーロッパは中国に政治犯の釈放を求めても、関係は必ずしも悪くなっていません。つまり、日本は本来なすべきことをすべきなのです。アジアの平和大国として、常に中国の人権状況を批判すれば、中国の国民は次第に「日本は中国を助けたいのだ」と理解するようになります。
──習近平主席は頑迷な保守派なのでしょうか、リベラルな改革者なのでしょうか。
中国を変える可能性が50%、変えない可能性が50%だと考えています。習近平は江沢民に選ばれた人物で、彼の重要な任務は既得権益集団を守ることです。ただ、裏を返せば江沢民が死去した後は習近平がどうなるか誰にも分からない。(民主化と戒厳令を解除に踏み切った)台湾の故・蒋経国総統のようになる可能性もある。習近平の父親は文化大革命で迫害され、天安門事件では虐殺に反対した人です。
──中国は本当の意味での民主国家になれるでしょうか。まだ十分な市民社会も育っていません。
中国は25年前、民主化の絶好の機会を逃しました。今となっては民主化は非常に困難ですが、政治は独裁、経済は腐敗、外国とは対立ばかり......このような中国政府に前途はありません。これまで民衆活動家、法倫功、チベット、ウイグル人が戦ってきましたが、中国政府を倒すことはできませんでした。ただし、国際社会はあきらめてはならない。日本政府も謙虚過ぎてはいけないでしょう。
Chen Pokong 陳破空(チェン・ポーコン) 1963年中国・四川省生まれ。86年に上海で起きた民主化要求運動に参加。広州市の中山大学で助教を務めていた89年、天安門事件に広州から加わり投獄。いったん釈放されたが94年に再び投獄され、96年にアメリカ亡命。コロンビア大学客員研究員などを経て、作家・テレビコメンテーターとしてニューヨークを拠点に活動している。