最新記事

領土問題

大混乱の南シナ海で台湾が示す「存在感」

各国が領有権を争う南シナ海の島で台湾が港湾施設の増築を発表したが、中国はこれを無視する構え

2014年5月27日(火)18時29分
スネーハ・シャンカル

2つの中国 中国との接近を図る馬政権に抗議する台北でのデモ Pichi Chuang-Reuters

 中国とベトナムなどの周辺国が、その領有権をめぐって激しい衝突を繰り広げている南シナ海。台湾はその真っただ中に位置する港湾施設を、1億ドルをかけて増築する計画を発表した。台湾を国土の一部とみなす中国は、今のところこの動きを無視しているようだ。

 問題の場所は、南シナ海に浮かぶ南沙諸島(スプラトリー諸島)の北部に位置する太平島。ここにある小さな空港に隣接する土地に、3000トン級フリゲート艦や沿岸警備隊の小型ボートが停泊できる規模の港湾施設を建造するという。さらには輸送航空機C-130ハーキュリーズの着陸を可能とする1200メートルの滑走路も新たに作られる予定だ。

 来年後半に完成予定の増築計画は、台湾がこの島を自国の領土と主張する意思の表れだろう。太平島が位置するのは、フィリピン、マレーシア、ベトナムに囲まれたちょうど真ん中あたりだ。

「台湾政府は、この要求は(中国が)唯一邪魔することのできないものだと分かっている。だから中国から非難される恐れなく、自由に太平島の施設を補強できる」と、ハワイに拠点を置く調査機関イーストウェスト・センターの上級研究員デニー・ロイは言う。「中国は必要があれば、台湾の駐屯地を守ることもするだろう」

 南シナ海を通る輸送船が運ぶ貨物の総額は、年間で5兆ドルに迫る。その海に位置し、各国による領有権争いが繰り広げられる南沙諸島の中で、太平島には最大規模の空港施設がある。台湾政府の今回の決定は、この海域における自国の漁師や海底鉱物探査の活動を支援する目的もあると見られる。

 中国と台湾は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張しているが、フィリピンやベトナム、マレーシア、ブルネイも石油が豊富に埋蔵されているこの海域の一部は自国のものだとしている。2008年に馬英九が台湾の総統に選出されてから中国と台湾の関係は改善したものの、両者の間にはいまだ根深い不信感が残っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中