米軍のアフガン駐留を中国が望む理由
新疆ウイグルを拠点に西方拡大を狙う中国だがテロ封じ込めなど地域安全保障はアメリカ頼り
タリバンの本拠地だったアフガニスタンのカンダハル州から米軍が去ったら? Andrew Burton-Reuters
中国は経済面でも外交面でも西方への勢力拡大を計画している。昨年打ち出したシルクロード経済ベルト構想と海のシルクロード構想は、南アジア、中央アジア、そしてサウジアラビアなど湾岸諸国に接近する外交政策の一環だ。
しかし、西方に向けた国内の経済拠点になるべき新疆ウイグル自治区では、少数民族ウイグル族による独立運動が激しくなる一方だ。中国政府にとっては、この地域の発展と治安の安定を図ることが、西方拡大のために必須の内政課題となっている。
折しも西部国境の先にあるアフガニスタンでは、いよいよ米軍主導のNATO(北大西洋条約機構)軍部隊の撤収が迫り、地域の安全保障の構図が変わる。アフガニスタンのカルザイ大統領が米軍の駐留継続を可能にする2国間治安協定への署名を拒んでいるため、米国防総省は全面撤退という「ゼロ・オプション」まで検討中だ。
しかしアフガン駐留米軍のジョセフ・ダンフォード司令官をはじめ米当局者らは、反政府武装勢力タリバンが勢いを取り戻した場合、現地政権だけでは対処し切れないとみる。もしも国際テロ組織アルカイダなどが活動を再開し、アフガニスタンが混乱状態に陥ったら中国にも大きな打撃となるだろう。
既にパキスタン南西部のグワダル港と新疆ウイグル自治区を結ぶ物流網「中国・パキスタン経済回廊」の計画は、治安上の不安から実現が危ぶまれている。
現実に迫るテロの危険
中国のもう1つの懸念は、不安定化したアフガニスタンやパキスタンが、新疆ウイグル自治区の分離独立を目指すテロ組織の訓練拠点と化すことだ。そんなテロ組織の母体と見なされているトルキスタン・イスラム党の指導者アブドラ・マンスールは、最近ロイターの電話取材に応えてこう述べた。
「中国での襲撃計画は多数ある。東トルキスタン(独立派は新疆ウイグル自治区をこう呼ぶ)の人々をはじめ、イスラム教徒は覚醒した。もはや中国はわれわれもイスラムも抑圧できない。イスラム教徒は復讐をする」