競争と伝統で板挟み「自殺大国」韓国の憂鬱
自殺対策が逆効果に?
かつては家族がセーフティーネットの役割を担っていたが、今や核家族化が進み、市場経済による格差拡大の問題もある。政府の施策は不十分で、貧困に陥り福祉制度にも見放されて自殺する人がいれば、受験の失敗や失業を苦に自殺する人もいる。
そんななかソウル市は、12年に一風変わった自殺対策を開始。漢江へ身投げする人が多く「死の橋」と呼ばれてきた麻浦大橋に、自殺を思いとどまらせるような一計を案じた。夜間、橋の欄干に人が近づくとセンサーが働き、「一緒に歩こう」「愛しているよ」といったメッセージを書いた広告に光が当たるようにしたのだ。
「生命の橋」と銘打ったこの企画だが、広告を設置してからこの橋で自殺を図ろうとした人はかえって増える結果に。自殺の名所という知名度が上がったことで、逆効果になったようだ。
だがソウル市庁の広報は、実際に自殺を遂げた人の数は一昨年の15人から昨年は8人へと、ほぼ半減したと反論する。自殺未遂の件数が増加したのは、集計方法が変更されたためであり、「生命の橋」企画とは無関係だとも。以前は主に目撃者情報に頼っていたが、今は監視カメラや自殺ホットラインの協力を得て集計しているという。
いずれにせよ、自殺のニュースはもうたくさん、と韓国国民は思っているはずだ。
From GlobalPost.com特約
[2014年3月25日号掲載]