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キム・ヨナ採点騒動と韓国「恨」の文化

2014年2月25日(火)16時50分
ジェフリー・ケイン

 テューダーによれば、恨を引き起こす大きな要因の1つは、大国から不当な扱いを受けた歴史にある。韓国人が厳しい歴史を経験するなかで育まれてきた悲しみの感情だ。

 20世紀初頭、朝鮮半島は貧しく荒廃した地域だった。日本の植民地支配を受け、戦争が終わって1940年代の冷戦期に入ると共産主義の北朝鮮と独裁国家の韓国に分裂。50年には朝鮮戦争が始まり、国土はさらに荒廃した。60〜70年代になると韓国は急激な発展を遂げるが、それによって公害や環境破壊など新たな問題も生まれ、社会には無力感も漂った。

 こうして生まれた恨の影響は、嘆きと悲しみを歌う韓国の伝統音楽や、現在も行われている土着のシャーマニズム的な儀式などにも表れている。もっとも、恨が韓国の民族性として認識されるようになったのは1970年代に入ってからだ。

 今回のヨナの件を含め、恨の恨みは復讐によっては晴らせない。悲しみの中で何とか事実を受け入れて克服するものだ。

 ある韓国人記者はニュースサイトに「ヨナの恨を解消する方法」という記事で、次のように書いた。ヨナの敗北にまつわる複雑な感情を癒すには、悲しみを受け入れる必要がある。その先に満足感が得られるだろう、と。

From GlobalPost.com特約

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