最新記事

アフリカ

南スーダンを駄目にする国際援助

内戦の瀬戸際に立たされた南スーダンが国家として成熟していくために必要なものとは

2014年1月16日(木)12時31分
ジョシュア・キーティング

政府軍と反乱軍による激戦地となり破壊された北部の都市マラカル James Akena-Reuters

 11年に独立を果たした世界で最も若い国、南スーダン。世界最貧国の1つでもあり、石油の領有権をめぐってスーダンと敵対するこの国が成功する見込みは最初から薄かった。国家崩壊の兆候をみるチェックリストがあれば、すべてに印が付くような状況だ。

 昨年末には政府軍と反乱軍の戦闘が勃発した。政治問題と部族問題をはらんだこの衝突で、これまでに少なくとも1000人以上が死亡し、20万人近くが避難民となっている。こうした現状に陥った原因の1つは、南スーダンで過去2年にわたり、国際的なNGOが過大な役割を担ってきた点にある。

 経済学者のグレッグ・ラーソン、ピーター・エイジャック、ラント・プリチェットが南スーダンを分析した昨年10月の論文によれば、南スーダンは06年から10年まで、毎年約10億ドルの国際援助を受けていた。これは独立前のことで、「独立後の1年間で受けた援助の総額は14億ドルに達する」と言う。

 ラーソンらは、南スーダンは「従来型の国づくりと国としての能力開発に失敗し、『能力の罠』から抜け出せずにいる」と主張する(能力の罠とは、賢く働くよりも一生懸命に働くことに注力してしまう状況だ)。

 南スーダンには数え切れないほどの教育や職業訓練、改革の場があり、国の諸機関には多くの外国人アドバイザーがいるにもかかわらず、真の変革が生まれていない。「国家のような体はしている」ものの、国家の働きをまったくしていないのだ。

複雑な問題に弱い援助

 極端な例を挙げよう。ある支援国の官僚は、支援国とやりとりするために用意された「偽の財務省」と、実際に予算配分を行う「本物の財務省」があるのを見破っている。本物の財務省は、支援国に見えないところで、南スーダンの当局者が裏から操っている。

 自己統治の歴史も公共機関もなく、基本的にゼロから始めるしかないなかで南スーダンの援助計画は実施されてきた。ラーソンらによれば、南スーダン人には国や制度が自分たちのものだという当事者意識が足りず、援助の効果を出すことだけに終始していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中