シリア政府軍、裏切りの武器売買
男たちはこれまでの経験から、政府軍から買った弾丸の危険性を知っている。一部の弾にはAK47とその使用者を爆破するため、通常の火薬の代わりにTNT火薬を詰めてあるのだ。
男たちはこれまで、数人の負傷者を出し、2丁のライフルを失った末に、偽の弾丸を見つける方法を身に付けた。今回は「怪しい」と思った誰かが「爆破処理」したようだ。被害は処理係の手が真っ黒になり、髪の一部が焦げ、テーブルに穴が開いただけで済んだ。
「ここにあるのは『正しい』弾丸だ」と、大隊長のアサド・イブラヒムが底の部分に赤いマークが付いている弾を見せながら説明した。次に赤いマークがやや暗く、中心からずれた場所に付いている弾を手に取ると、イブラヒムはこう言った。「こっちはバシャル(・アサド)の弾丸だ。こいつはわれわれの銃を爆発させる」
イブラヒムによると、偽の弾丸はこれまでに他の部隊で多数の銃を破壊し、数人の死傷者を出しているという。だが、喉から手が出るほど武器が欲しい彼らにとって、危険は承知の上だ。
政府軍の武器庫襲撃も
アッシェイフによると、「シャームの鷹」が保有する武器の半分は敵から押収したもの。その大半は政府軍との戦闘や検問所への襲撃で手に入れた武器だが、政府軍の武器庫に対する組織的攻撃も行っているという。
先週、ムガーラの検問所を襲撃したときは、珍しい戦利品が手に入ったと、アッシェイフは誇らしげに言った。対空兵器と一緒に奪い取ったT62戦車だ。
もう1つの有力な武器入手ルートは、政府軍から離脱した兵士が武器と一緒に反政府勢力に合流するケースだ。基地の地面に腰を下ろした男たちが、こんな笑い話を聞かせてくれた。
離脱を図った2人の兵士は上官に対し、反政府側の動きを調べるために銃を据え付けた車両と銃火器が必要だと訴えた。そしてトラックに武器と弾薬を満載すると、そのまま反政府側に合流。数時間たってから、「反乱軍の裏切り者」を追い詰めているところだと上官に無線で報告した、という。
自由シリア軍は武器の調達だけでなく、製造も得意だ。基地から見て町の反対側にある秘密倉庫では、大きな釜で肥料と砂糖を煮込んでいた。ティーポットから大きな金属製パイプまで、彼らはあらゆる材料を組み合わせ、対戦車・軍用車両用の仕掛け爆弾を作る。23ミリ弾の薬莢には、爆薬と一緒に小さなろうそくの芯が入っていた。
「われわれはとても単純な武器で、戦車やロケット、ミサイルといった高度な兵器を持つ体制側と戦っている。国民をひたすら殺すだけの政府や体制とは、いったい何なのか」と、離脱兵のファタハッラーは大忙しの武器工場を案内しながら言った。
「シャームの鷹」の男たちが繰り返し必要性を訴えていたのは、外国による軍事介入ではなく、武器調達への支援だった。だが外国の支援があるかどうかにかかわらず、彼らはアサドを権力の座から追放するまで戦い続ける覚悟だ。
「コーランには、敵と戦うために可能な限り武器を備えよと書いてある」と、アッシェイフは言った。部下の指揮官たちは次の作戦をめぐり議論を続けている。
「たとえ武器がなくなっても、使えるものが石だけでも、われわれはアサドが失脚するまで革命運動を続けていく」
From the-diplomat.com
[2012年6月20日号掲載]