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英政治辛勝ロンドン市長はイギリスを救えるか
英地方議会選で保守党が惨敗するなかで再選を果たした大物政治家は、「金持ち政党」の汚名をそそげるか
次は首相か キャメロンの後継と目されるジョンソン Stefan Wermuth-Reuters
ロンドンはイギリスにあらず──ロンドン市民ではないイギリス人はこう考える。今月初めに行われた選挙が何よりの証拠だ。地方では左派が躍進したのに、ロンドンでは右派の現職市長が再選された。
与党・保守党の現職ボリス・ジョンソンは、市長への返り咲きを狙った労働党のケン・リビングストンに辛勝した。しかし保守党は地方議会選で労働党に惨敗。緊縮財政を敷く政府に対する有権者の厳しい評価と受け止められている。
市長選は政策よりもキャラクターの勝負だ。まじめな顔で冗談を飛ばすリビングストンよりも、上流階級出身で押しの強いジョンソンのほうが気に入られたらしい(もっとも、ほんのわずかな差だったが)。
再選されたジョンソンは今年夏に開催されるロンドン五輪の舵取りをすることになる。さらに厳しい予算の下で交通機関を整備し、公営住宅を供給し、昨年夏に起きた暴動の再発を防がなければならない。
側近によると、新市長の優先事項の1つは、かつて路線バスとして使われていた赤い2階建てバスをよみがえらせることだという。だが既に予算の無駄遣いだと批判の声が上がっている。
この計画はリビングストンへの挑発だと捉える人も多い。2階建てバスを現在の人気のない連結バスに変えたのは、市長時代のリビングストンだからだ。
一方、ジョンソンは国政に戻るつもりだという噂を否定した。保守党が厳しい状況にある今、大衆受けするポピュリストタイプのジョンソンはキャメロン首相に代わる将来の首相候補とみられている。
「この街を不況から脱出させ、犯罪を減らし、経済成長、投資、雇用をもたらすと、私はロンドン市民に誓った」と、ジョンソンは語った。「この公約は市長としての立場で全うする」
労働党時代が再来する?
今回の選挙で、キャメロンが将来を不安視してもおかしくはない。連立を組む保守党と自由民主党が共に大敗し、エドワード・ミリバンド率いる労働党に期待が高まっているからだ。
裕福で有権者の心が理解できないと党内からも批判されるキャメロンは、地方選の結果を受けて謝罪。公共予算を大幅に削減せざるを得ない「困難な時代」のせいだと語った。
「私たちに求められているのは、前政権から引き継いだ債務、赤字、破綻した経済への対策のために苦渋の決断をすることだ。今後もこうした決断を迫られるだろうし、国のために正しいことをしなければならない」と、キャメロンは言った。
しかし最近の政府の失態を思えば、キャメロンの言葉はむなしく響くだけだ。政府の不手際でガソリン価格高騰を招いたりテロ容疑者の強制送還を怠ったり、高齢者の税金を引き上げたり......。メディア王ルパート・マードックとの癒着でも非難を浴びている。
「キャメロンはやる気に欠け、牛乳の値段も知らないお坊ちゃんで、国民が困窮しているのを理解せず、リーダーとしての戦略がないと批判されている」と、ベテランの政治評論家マイケル・ホワイトは書いた。「今回の敗北は、ある種の政治サイクルの1つだと軽視されるかもしれない。だが、指導者が国民の信頼を取り戻すのは難しい」
労働党のミリバンド党首は、今回の勝利は10年以上にわたる労働党政権の間に失った国民の信頼回復に向けた一歩だというだけでなく、経済が回復に向かう兆しでもあると語った。「人々は苦しんでいる。イギリスは今よりも良くなることを、彼らに示さなければならない」
From GlobalPost.com
[2012年5月16日号掲載]