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精神鑑定ノルウェー連続テロ犯裁判の奇妙な展開
77人を殺して「自分は正常だ」と言い張る被告が統合失調と判断された根拠
不敵な笑み ブレイビク被告の過激思想と精神疾患の境目は Scanpix-Reuters
ノルウェーで昨年7月に77人が死亡した連続テロ事件の被告アンネシュ・ブレイビク(33)の責任能力をめぐって、逆説的な事態が生まれている。
裁判のために実施された精神鑑定で、昨年11月に妄想型統合失調症との結果が出た。だが4月16日予定の公判を前に、被告は弁護団が自分のことを精神的に正常だと主張することを望んでいる。
正常となると刑事責任を問われ、最高21年の禁錮刑になるかもしれない。「大抵の人は罰を逃れるために精神疾患という鑑定を望むだろう」と弁護人のオッド・グローンは言う。
対する検察側は、精神疾患だから治療施設に強制収容すべきと主張する構えだ。しかし被告の言い分によると、事件を起こしたのは今にも国がイスラム過激主義に乗っ取られるという自説に人々の注目を集めるため。精神疾患と判断されたら、犠牲者の死が無意味になるという。
「正常だが異常と鑑定されたい人は、正常と見なされたいというふりをわざとするものだ」と精神科医スベン・トルゲルセンは言う。「一方、実際に異常がある場合も、自分は正常だと主張するケースがある。実にややこしい話だ」
ブレイビクの精神鑑定で妄想型統合失調症の根拠として挙げられたのは「テンプル騎士団のメンバーを自称する」「孤立して暮らす」「他者の思考が分かると思い込む」といった点だ。
この鑑定結果に対して遺族側から再鑑定を求める批判があり、精神科医チームは現在、24時間態勢でブレイビクの言動を「監視」している。統合失調症との鑑定結果を疑問視するトルゲルセンいわく、火星人か金星人に操られているとか、テレビ番組を通じてメッセージが届いたとか、SF的な幻想や幻覚がなければ、統合失調症とは言えない。
精神科医ランディ・ローゼンクビストも、あんなに綿密な犯罪計画を練ることができる患者はめったにいないと指摘する。彼女は収監施設への報告書にこう書いた。「常軌を逸した彼の考えは、極端な思想の表現であって、精神的に異常な現実観ではないといえる」
ローゼンクビストによると「過激思想が精神異常に変化する過程についての理論的な研究はほとんどない」という。
新たな精神鑑定で別の結果が出たら、弁護側も検察側も対応に追われるだろう。
From GlobalPost.com
[2012年4月 4日号掲載]