フランス新大統領を待ち受ける二重苦
欧州債務危機と内政の綱渡り――財政赤字を削減しなければフランスにも欧州にも未来はないが、やり方を誤れば国民からの支持を失いかねない
長年のツケ サルコジ(右)もオランドも、フランス政府が続けてきた放漫財政に無関係だったわけではない Stephane Mahe-Reuters
フランスにとって、2012年は過去に例を見ない年になるはずだ。これまでフランスの大統領選では、内政問題が争点になるのが常だった。しかし、欧州を襲った債務危機がこの経験則をひっくり返した。
フランスの未来は欧州の未来にかかっており、逆もまた真なり。欧州諸国が一刻も早く足並みをそろえて断固たる行動を取らなければ、日本型の「失われた10年」が待っているかもしれない──IMF(国際通貨基金)を率いるクリスティーヌ・ラガルド専務理事ら専門家からは、そんな警告の声が上がっている。
フランスは長年、財政赤字を垂れ流してきた。社会福祉制度は国庫に重くのしかかっているし、歴代政権は改革に及び腰だった。そして民間銀行は、深刻な財政問題を抱える周辺諸国の国債を多く保有している。これでは、フランスの未来に向けた選択肢はおのずと限られてくる。
英シンクタンクの欧州改革センターのチャールズ・グラント所長に言わせれば、「EU設立以来初めてドイツがトップの座を確立し、フランスはナンバー2になった」。同時にEUやドイツ、ギリシャ、イタリアなどの決定が、自国政府の決断と同じくらいフランスの未来に大きな影響を及ぼす時代が突然やって来たのだ。
選挙は経済回復に逆効果
格付け会社も、フランスの政策に厳しい目を向けるようになった。米格付け会社のムーディーズは10月、フランスの信用格付け(現在は最上級の「Aaa」)について、これまで「安定的」としてきた見通しを3カ月間かけて見直すと発表。スタンダード&プアーズ(S&P)も12月、ユーロ圏15カ国の国債の格付けを引き下げる方向で見直す方針を明らかにした。
フランスの運命は世界金融市場からの信認、つまり「フランス財政が破綻する危険はなく、そろそろ財政規律へと舵を切るはずだ」と世界に信じさせることができるかどうかに懸かっている。「もはやユーロを救う手だてなどフランスにはない」と、コラムニストのニコラ・バブレはルモンド紙に書いた。「だがフランスが立ち直れなければ、統一通貨圏の崩壊の引き金になりかねない」
もはやヒーローにはなれない。緊縮財政も避けられない。失業は99年以降最悪の水準にある。OECD(経済協力開発機構)によれば、フランス経済は「短い軽度の景気後退に突入した可能性があり」、さらなる財政引き締めが必要だという。
選挙が近づくと、候補者がばらまき政策を公約したりするのは当たり前だが、今の状況下では市場の信認を遠ざけるだけ。フランスの国家財政は74年以降、赤字続きで、とりわけ大統領選の年には赤字幅が減ったためしがない。