中国原発はフクシマに学べ
中国政府は目先の経済的・地政学的利益の誘惑に打ち勝ち、旧式の原子炉を他の途上国に輸出するのを止めることができるか。その答えが「フクシマ後の世界」で原発の安全性を大きく左右するだろう。
一方、原発の安全性を確かなものにするには、緊急事態への対応策の整備が欠かせない。だがコスト面の懸念や、国民にむやみに恐怖感を与えたくないという心理から、各国政府も原子力関連企業も原発事故の「最悪のシナリオ」を無視しようとする傾向がある。
現に日本政府と東京電力は、チェルノブイリの事故から25年もたっていたにもかかわらず、福島第一原発事故への備えがまったくできていなかった。09年11月、中国が江蘇省の田湾原子力発電所で初の非常事態訓練を行ったときも、当局は想定内の事故を効果的に収束させる緊急対応ができれば十分だと決めてかかっていた。
発電目標より大事なもの
だが79年にスリーマイル島、86年にチェルノブイリ、そして11年には福島の事故が起きた。主要な原発保有国の一部が既に最悪の原発事故に見舞われている以上、中国政府と原子力関連の国有企業は最悪の事態を想定した緊急対策計画がない状態をいつまでも続けるわけにはいかないはずだ。
もし大規模な原発事故が起これば、国内外に破壊的な影響が及び、世界の原子力産業全体の信頼性にも傷が付く。それを考えれば、中国政府は原発の安全計画を政策上の優先課題に据え、原発監視体制の抜本的な改革と原子力業界の透明性向上を進めるべきだろう。
原発関連企業は野心的過ぎる原子力発電能力の目標を声高に叫ぶのではなく、輸入した第3世代炉の建設と技術の国産化を着実に進めていくべきだ。
最後に、中国政府は建設中の先進型原子炉の運転経験を十分に積み、必要な改良を行うまで、新たな原発建設計画の承認を凍結し続けるべきだ。実験炉や原型炉のテストが不十分なまま発電所の建設を急げば、実験段階の欠陥が残ってしまう恐れが十分にある。
喉から手が出るほどエネルギーが欲しい中国にとって、犯してはならない致命的ミスだ。
From the-diplomat.com
[2012年4月 4日号掲載]