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債務危機抗議の自殺が物語るギリシャ庶民の現実
厳しい財政緊縮策が続くなか、アテネの路上で政府に抗議する自殺事件が発生。これを機に、市民の不満に再び火がついた
声を上げろ 自殺事件を機に、アテネのシンタグマ広場では市民と警官隊が衝突(4月5日) Yorgos Karahalis-Reuters
厳しい財政緊縮策が続くギリシャで4日朝、通勤ラッシュの時間帯に悲劇は起きた。首都アテネの中心部にある国会議事堂前のシンタグマ広場で、70代の元薬剤師の男性が銃で頭部を撃ち抜き、命を絶ったのだ。
「威厳ある形で人生を終えるには、こうするしかない。ごみ箱をあさるようにはなりたくない」と、男性の遺書には書かれていた。「未来のないこの国の若者たちはいつか武器を手に取り、国家の裏切り者をシンタグマ広場で吊るし上げにするだろう。1945年にイタリア人がムッソリーニを吊るしたように」
今回の事件をきっかけに、シンタグマ広場では激しい抗議活動が勃発した。BBCの報道によれば、事件のわずか数時間後、数百人の市民が広場に集結して抗議デモを展開。デモ隊は火炎瓶を治安部隊に投げつけ、治安部隊が催涙ガスで応酬する事態となった。
アテネ・ニュースによれば、抗議活動はSNSなどを通じて組織された。参加者は「死に慣れてはだめだ」と書かれたスローガンを掲げて行進した。
上昇を続ける自殺率
自殺の現場には、死を悼む花やメモが数多く置かれている。なかには「もう我慢ならない」と書かれたメモもあった。
厳しい経済状況が続くギリシャでは、自殺が深刻な社会問題になっている。複数の報道によると、金融危機が世界を襲った07〜09年の間、ギリシャの自殺率は17%も上昇したという。
自殺した男性がかつて所属していたアッティカ薬剤師協会のコスタス・ルーラントス代表は、次のようなコメントを発表した。
「彼があのような死に方を選んだのは、政治的姿勢を訴えるためだ。もし自宅で自殺していたら、これほどの騒ぎにはならなかった。しかし実際は、自宅で命を絶つ人も大勢いる。今回の事件は、明るい日光と笑い声が自慢のわが国で起きている数多くの自殺の一つであることを認識する必要がある」