最新記事

中東

殺戮が続くシリアにイランが「援護射撃」

「反米」同盟国の応援を受けて、シリア政府軍の市民に対する攻撃は激しさを増す一方

2012年2月21日(火)12時57分
ジェニファー・マットソン

最後の砦 反体制派の拠点ホムスのババアムル地区でも多くの市民が犠牲に(2月8日) Mulham Alnader-Reuters

 民主国家への移行を求める反体制派と、それを抑え込もうとする政府軍の武力衝突が激しさを増すシリア。市民を巻き込んだ無差別殺戮の犠牲者はすでに数千人にのぼっている。 

 欧米諸国はアサド大統領の退陣と弾圧の停止を求めて圧力をかけ、米議会ではシリアの反政府勢力への武器供与を主張する声も上がっている。国際社会の緊張が高まるなか、欧米の介入に反発する新たな勢力が、シリア陣営に「参戦」した。核開発疑惑をめぐって欧米諸国と一触即発の緊張状態にあるイランだ。

 2月20日、イラン海軍の軍艦2隻が、地中海に面するシリア西部タルトスの港に入港。アサド政権への支持を誇示するための行動とみられる。

★人道目的の停戦交渉も実らず

 一方、国際赤十字は市民の被害が特に深刻な地域に支援物資を届けるため、一時的な停戦に応じるようシリア当局と交渉していた。だがシリア軍は20日、これまでも激しい砲撃を加えてきた反体制派の拠点都市ホムスの周囲に戦車や部隊を集結させた。

「ホムス最大の関門はババアムル地区だ」と、国際NGO、AVAAZのウィサム・タリフはニューヨーク・タイムズ紙に語った。「政府軍はまずホムスを制圧しなければ、イドリブ市やハマ市に兵力を移動させることはできない。反政府勢力を背後に残したまま先へは進めない」

 タリフによれば、ホムスで20日にも16人が殺害されたというが、この手の情報を確かめるすべはない。

「政府軍がババアムルを奪い返したら、人的被害はとてつもなく大きくなる」と、イギリスを拠点とする人権団体のシリア人権監視団を率いるラミ・アブドゥルラーマンも警告している。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU通商担当委員、米高官と会談 トランプ関税回避目

ワールド

米情報機関「中国は最大の脅威」、AIで米凌駕 台湾

ビジネス

NY外為市場=ドル/円軟調、関税導入巡る不透明感で

ビジネス

米国、輸出制限リストに70団体を追加 中国・イラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中