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大気汚染の実態隠しに北京市民の怒り

米大使館が「危険」と警告するレベルの汚染でも「霧」と言い張る当局との戦い

2012年2月2日(木)12時57分
キャスリーン・マクラフリン

一寸先も闇 大気汚染による濃霧で交通も大混乱 Reuters

 北京に暮らす人々にとって、冬の冷たい風は耐え難いもの。だが先週の寒冷前線と強風には感謝している。今年最悪レベルの大気汚染を吹き払ってくれたからだ。中国版ミニブログ「新浪微博」には「冬の風はとんでもないと思っていたが、今は大好き」というコメントも出た。

 スモッグ発生に伴う交通の混乱や健康リスクを懸念する国民は、汚染の実態を明らかにするよう求めている。政府の統制を受けるメディアでさえ先週は、大気の状態を「霧」ではなく「スモッグ」と表現した。

 大気汚染を測定している北京のアメリカ大使館は最近、「危険」と警告を出していた。だが北京市環境保護局は「軽度」な汚染と判定。政府は微粒子の測定開始を約束しているが、それも2016年とまだ先だ。

 環境政策が専門の張海浜(チャン・ハイピン)北京大学教授は「過去20年間、北京など中国東部の都市で大気の状態は改善している。それでも国民が不満を持つのは、環境が改善される以上の速度で生活の質向上への要求が高まっているからだ」と、指摘する。大気汚染にあえぐ北京市民の怒りはしばらく収まりそうにない。

[2011年12月21日号掲載]

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