最新記事

アジア

中国は大国ぶった「隠れ小国」

2011年4月8日(金)17時53分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

ひまわりの種よりちっぽけな存在

 間もなく退任する駐中国米大使のジョン・ハンツマンは4月6日、艾や劉らは「いかなる時も国民のために尽くすよう中国政府に迫っている」と述べ、彼らに敬意を表した。こうした要求は、どんな政府もしっかり受け止めるべきだ。そのために政府はあるのだから。

 艾のような個人やその思想にたじろぐ中国の指導者たちは、恐れているのだ。世界のほとんどの観測筋が深刻に考えていないある事を、はっきりと認識している。日本が国土の下を走る断層を脅威に感じているとすれば、中国は不満という「マグマ」の上にいると言っていい。失業者や満足な職を手にできない人、人権さえ剥奪されている人が何億もいる中国では社会不安は爆発寸前だ。多くは高学歴で、他国でならもっと機会に恵まれるであろう彼らは、権力維持に汲々とする政権にとっては常に脅威なのだ。

 中国政府が艾を恐れるのは、自分たちの考えが彼の思想より小さいことを分かっているからだ。小さいようで大きな可能性を秘め、殻の中でじっと芽が出るのを待つひまわりの種よりちっぽけなことを分かっているからだ。中国には広大な国土と素晴らしい文化がある。だが指導者たちの「恐怖の対象」を見れば、大国になるにはまだまだ時間がかかることがよく分かる。

Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog, 8/4/2011. © 2010 by The Washington Post Company.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、クルスク州の完全奪回表明 ウクライナは否定

ワールド

トランプ氏、ウクライナへの攻撃非難 対ロ「2次制裁

ワールド

イラン南部の港で大規模爆発、14人死亡 700人以

ビジネス

アングル:ドバイ「黄金の街」、金価格高騰で宝飾品需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中