世界遺産奪還か首相退陣求める黄シャツ隊
その中で中核的な役割を果たしているのが、90年代にクーデターを首謀したこともある元将軍のチャムロン・スリムアン(75)。サンティアソクの強大な支援者でもある。
チャムロンは、愛国心に訴えかける演説と好戦的な発言で群集の心をつかんでいる。タイ軍の戦闘機がプレアビヒア寺院周辺を飛ぶ様子を語り、アピシット政権の「弱腰」を批判するチャムロンの言葉に刺激されて、バンコクではアピシット首相の退陣を求める抗議デモが起きている。
攻撃的な姿勢にもかかわらず、敬虔な仏教徒としてのチャムロンの信用が揺らぐことはない。集会の参加者たちは、僧侶や王族に敬意を表するようにチャムロンの足元にひざまづく。彼は既婚者だが、床で眠り、禁欲を守ることで精神的な清らかさを守っていると信じられている。
ASEANと国連が仲裁に乗り出したが
昨年12月にタイの国会議員ら7人が不法入国容疑でカンボジア当局に拘束され、うち2人が今もプノンペンで拘置されている一件も、タイ人の愛国心に火をつけている。カンボジアの裁判所は2人に対し、スパイ罪で長期の禁錮刑を言い渡した。
国境での銃撃戦が散発的に続くなか、タイとカンボジアは共に、相手が先に攻撃を仕掛けたとする書簡を国連安全保障理事会に提出。ASEAN(東南アジア諸国連合)の議長国であるインドネシアの外相も仲裁に乗り出した。衝突の責任はタイにあると主張するカンボジアのフン・セン首相は、国連平和維持活動(PKO)部隊の派遣にまで言及している。
だが「領土」を取り戻さない限りタイ側は引っ込みがつかないし、弱腰アピシットの退陣を求める声も止みそうにない。
(GlobalPost.com特約)