日本は次のギリシャになるか
日本国債の約95%は銀行や年金運用機関などを中心に国内で保有され、ゼロに近い金利とデフレ状況に合わせて利回りは非常に低い。だが国の借金が膨大なため、金利がわずかに上昇するだけで日本政府は債務不履行に陥る恐れがある。
「10年国債の利回りが(現在の1・2%台から)1・6%に上昇すれば、日本は第2のギリシャなのかと問う報道が増えるだろう」とシュルツは言う。
国民がパニックになり、日本政府の返済能力を疑うようになれば、より安定した国外の金融機関に預金を移すなどして資本逃避が起きかねない。
そうなれば政府は国外の投資家に国債を買ってもらうしかなくなる。すると従来より高い利回りでの国債発行を余儀なくされ、国債の利子を払えなくなり、支出にも支障が出るだろう。日本にギリシャを支援したEU(欧州連合)のような「白馬の騎士」が現れなければ、紙幣を大量に増刷する以外に選択肢はほぼない。その結果起きるのがハイパーインフレだ。
これが単なる人騒がせな破滅シナリオでないのなら、いくつかの疑問が生じる。なぜいま円が安全な通貨と見なされているのか。なぜ日本国債がジャンク(くず)並みと格付けされていないのか。
日本国債をAa2に格付けした格付け会社ムーディーズの広報担当者は「懸念すべき点はあるが安定してみえる」と説明。フィッチとS&Pは格付けを引き下げたものの、投資適格のAAとしている(もっとも、これらの格付け会社がアメリカのサブプライムローン関連金融商品を最上級のAAAに格付けしていた事実を忘れるべきではない)。
資産1400兆円の幻想
日本の財政が安定しているように見えるのは巨額の蓄えがあるためだ。1400兆円という個人金融資産が巨額の政府債務を保証しているようなものだとよく言われる。だが野口は「ナンセンスだ」と一蹴。個人金融資産の大半は既にさまざまな形で投資されており、多くは国債そのものにつぎ込まれていると指摘する。
日本政府は米国債など1兆ドル以上の外貨準備を持ち、日本の対外純資産は225兆円と世界一だ。こうした巨額の蓄えがあるために(政府はその大半に手を出すことができないが)日本の為政者は油断しているのかもしれない。
だが日本国債の金利がギリシャの危機前の金利の半分にも達すれば、仮にこれだけの蓄えを政府が使えるとしても、まったく足りないだろう。
(GlobalPost.com特約)
[2010年6月 2日号掲載]