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不動産土地不足を心配するオーストラリア
せっかくの人口増に反対する新党まで表れた、譲れないスペース感覚
オーストラリア人にとって「広大な土地」は掛け替えのないもの。だから今この国を襲っている急激な人口増加には耐えられない。
現在の人口は2200万人。これが50年までに65%増え、3600万人近くに達するといわれる。この増加率は予想される世界平均のほぼ2倍。政府はこれを昨年9月に発表したが、ラッド首相は「人口増加は朗報、大きなオーストラリアはいいことだ」と発言。だがすぐに環境問題や食糧不足を懸念する人々が反発した。
さらに人口増に反対する政党が2つも誕生。ほかの野党も今年の総選挙で人口問題を論点の1つに据える構えだ。こうした動きを受け、ラッドは今年4月に「人口相」を新設、対策を練るよう指示している。
確かに、オーストラリアには人口増加に対応できる土地がある。国土面積が世界6位なのに対し、人口は55位。とはいえ人口の80%は沿岸部に住み、耕作可能な土地は国土の6%にすぎない。
不動産価格も懸念材料
経済的にみれば、人口増加は多くの場合、消費や不動産の需要を加速させ成長の原動力となる。実際、オーストラリア経済は昨年プラス成長を記録。エコノミストらは2・1%の人口増のおかげで金融危機による深刻な被害を免れたと指摘している。だが昨年の不動産需要の伸びが不動産価格を20%も上昇させる副作用もあった。
世論調査では69%が人口は3000万以下が望ましいと回答。「オーストラリア人にはスペースが大事なのだ」と、シンクタンク、グラッタン研究所のソール・エスレークは言う。「シドニーやメルボルンが人口過多になったら、土地の使い方を根本的に見直さなければならなくなる」
[2010年6月 2日号掲載]