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イギリスクレッグ英副首相は「反米」なのか
イギリスのクレッグ新副首相(自由民主党)は「反米」なのか。ブラウン前首相は総選挙前のテレビ討論でそうだと明言している。
やけっぱちの捨てぜりふだったと取れなくもない。結局のところ、クレッグは保守党のキャメロン首相をトップに発足したばかりの連立政権の中心人物となり、一方のブラウンは故郷スコットランドに戻って敗北をかみしめる身の上だ。
それでもブラウンの発言には、大西洋の両側でまじめに議論されるだけのとげがあった。ブラウンの発言は「よくある中傷にとどまらなかった──真実味があった」と、クリストファー・メイヤー元駐米英大使は後日、語っている。メイヤーによれば、クレッグの外交政策の位置付けからは「戦略上のアメリカ離れ」が見て取れる。
「反米」の証拠としてよく引き合いに出されるのは、クレッグが今年3月にロンドンの王立国際問題研究所で行った演説だ。クレッグは50年代半ばのスエズ危機(第2次中東戦争)以来「イギリスの外交政策を支配してきた対米協調主義の見直し」を提唱。英政府は「ホワイトハウスとペンタゴンの言いなり」だと主張した。
しかし批判派は、クレッグの微妙な言葉のあやを見落としている。彼は3月の演説で、米ミネソタ州での大学時代とニューヨークでのジャーナリズムの研修生時代を振り返った。「私もみんなと同じように対米協調主義だ......積極的で強固で比類なく親密な英米関係を維持することが、わが国の利益に不可欠だと思う。ただし、英米関係がすべてというわけではない」
こうした発言は、クレッグの修正路線の真の重要性を浮き彫りにする。イラク戦争以後、英政界の主流はアメリカ盲従からいわゆる「特別な関係」へと移っていった。
クレッグが外交政策で主導権を握るわけではない。だがキャメロン首相もアメリカとの「強固だが卑屈ではない」関係を提唱している。それでこそ分別ある指導者というもの。ブラウンだって、できるものならそうしたかったはずだ。
[2010年5月26日号掲載]