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バチカンローマ市民も「法王は辞めろ」
窮地 公式サイトに性的虐待問題への対応指針を載せるなど信頼回復に努める法王だが Max Rossi-Reuters
2000年代の初め、アメリカでカトリック教会の性的虐待スキャンダルの嵐が最高潮に達していたときでさえ、前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の支持率はほとんど下落することはなかった。それに比べて現法王ベネディクト16世の事情は違うようだ。
4月17日に法王が訪問したマルタでは、法王のポスターにヒトラーを模した口ひげや「小児性愛」という言葉が落書きされた。イギリスでも、9月に予定される法王の訪英に反対する1万人以上の署名が集まった。
調査会社ギャラップとUSAトゥデー紙の調査によれば、米国民の法王への支持率は、08年の63%から今年3月末には最低値の40%にまで下落した。アメリカでの支持率が一度も61%を下回らなかったヨハネ・パウロ2世に比べて現法王の不人気ぶりは明らかだ。
伝統的にベネディクト16世が高い人気を誇る土地でも、支持は揺らいでいる。出身国ドイツでは、国民の56%がカトリック教会への信頼を失ったとし、数千人規模で教会離れが進んでいる。
ベネディクト16世が本名で「父なるラッツィンガー」と呼ばれるイタリアでは、国民の62%が現法王の下での教会運営に不満を持っている。そのうち35%は、ベネディクト16世が責任を司教に押し付けようとしているとみている。
今や性的虐待の被害者が聖ペテロ広場で抗議活動を行う光景は日常的なもの。新聞にも「バチカンは罪を償え」「ラッツィンガーを逮捕せよ」などの見出しが躍る。ローマ市民は失望し、専門家の間では早くも次のコンクラーベ(法王選挙)の噂がささやかれている。
問題となっているのは、法王が枢機卿時代に性的虐待の隠蔽に関与していた疑いだ。そのため次の法王になる可能性がある枢機卿たちは、現在のスキャンダルとの関与を厳しく調査されるだろう。
[2010年4月28日号掲載]