無人機「拡散」が生む脅威
汚い爆弾の運搬に理想的
最近の米空軍の研究によれば、この種の無人機システムはテロ組織が最も入手しそうな大量破壊兵器──つまり放射性物質や生物・化学兵器を搭載した汚い爆弾の「理想的な運搬手段」になり得る。
こうした技術はアルカイダのような国際テロ組織だけでなく、国内の過激派集団やオクラホマシティー連邦政府ビル爆破事件を起こしたティモシー・マクベイのような一匹狼に危険な力を与えかねない。あるロボット工学の専門家は、5万ドルもあれば「少数の素人でもマンハッタンの機能を麻痺させることができる」と言う。
冷戦後のアメリカは、国内外の防空体制を真剣に考える必要がなかった。だが、そろそろ見方を変えるべきだ。現行の兵器では、この種の新たな脅威にうまく対処できない。
熱を発しない電池駆動の超小型無人機は、従来の熱追尾式ミサイルでは迎撃が難しい。パトリオット・ミサイルなら撃墜できるが、1基300万ドルもするのでコストが非常に高くつく。
アメリカにも、多くのライバル国と同じようなロボット工学の国家戦略が必要だ。具体的には大学院生への奨学金、研究施設への資金援助、シリコンバレー型の産学連携事業の強化が求められる。
さもないと、アメリカは他国の専門家に依存することになる。既にアメリカの防衛・テクノロジー関連企業は、ハードウエアでは中国、ソフト面はインドに頼っている。安全保障上、明らかに問題だ。
自分たちが無人機をどう使うかだけでなく、敵がアメリカに対してどう使うかを考慮した軍事・国土安全保障上の戦略も必要になる。米政府はもっと幅広い脅威を想定した計画と訓練を策定し、この危険な技術に接触できる人間を限定するための法整備を進めるべきだ。アメリカ生まれの画期的な新兵器でアメリカ自身が攻撃される事態を防ぐために。
[2010年3月31日号掲載]