韓国を世界に売り込む男
経済危機からいち早く立ち直った今、自らのビジョンとトップセールスで先進諸国の指導的地位を目指す李明博
韓国CEO ワンマン経営は任せろ(09年9月、青瓦台で。韓国経済はこの頃すでに、景気後退を脱しようとしていた) Reuters
ついに韓国が先進諸国をリードする立場に就くチャンスをうかがい始めた。韓国経済は09年の第3四半期に前期比3・2%増の高成長を達成。OECD(経済協力開発機構)に加盟する先進30カ国中、いち早く世界的不況から抜け出した国として注目を浴びた。OECDの予測によると10年の韓国の経済成長率は4・4%で、加盟国中で最高の数字を挙げる見込みだ。
李明博(イ・ミョンバク)大統領は、世界経済危機の終焉をきっかけにして韓国の飛躍を実現させようとしている。経済危機によってアメリカの国力がますます低下する一方、中国など新興国が台頭。両者の「隙間」を利用すれば、韓国の存在感を強めることが可能だと李はみている。
李の目標は韓国を内向きの経済国から世界に影響力を及ぼすソフトパワーに変えること。気候変動や金融規制といった世界的な問題の解決に関して先進国と途上国の仲介役になろうというのだ。
特に李は、途上国の反発のために停滞している多角的貿易交渉の動きに弾みをつけたいと望んでいる。一方で、途上国保護のために世界的な金融システムの監視体制を強化したいとも考えている。
李は地球温暖化防止にも前向きだ。この分野での影響力を確保するために、20年までに特別な対策を取らなかった場合に比べて温室効果ガス排出量を30%削減すると発表。かなり野心的な目標だ。
11月にはG20サミットを主催
今年11月に20カ国・地域(G20)首脳会議が行われる予定だが、このサミットの開催地に選ばれたのがソウル。多くの韓国人にとって、この栄誉は韓国が経済と環境の問題にうまく対処していることの証しと映っている。
「古い体制は解体され、新しい体制に取って代わられようとしている」と、李は新年の演説で青瓦台(大統領官邸)から国民に語り掛けた。「われわれのビジョンを世界全体に広めなければならない」
今の先進諸国で、企業経営者から国家指導者に転じたのはイタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相と李くらいだ。李は現代建設のトップだったとき、部下から「ブルドーザー」と呼ばれていた。今も同じようにワンマン型の手法で国政運営に当たっている。
現代建設の経営者として、李は外国での建設プロジェクトに積極的に取り組んだ。いい例がマレーシアの巨大なペナン大橋だ。
中国や日本といった近隣の大国に翻弄されてきた歴史から、韓国人は守勢に回りがちなところがあるが、李は現代建設の企業文化並みの国際性を国民に植え付けようとしている。英語が使われる機会を増やすことや、韓国と世界の接点を拡大することに熱心なのはそのためだ。
ソウル市長時代の李は、高架道路の下で暗渠になっていた清渓川の復元工事を行い、都心にせせらぎを復活させた。このプロジェクトは大論争を巻き起こしたが、今では市民や観光客の人気スポットになっている。