ロシアが企てた対米「経済戦争」
冷却化する二国間関係への教訓
これらを総合すると、ロシアのグルジア侵攻はアメリカとの二国間関係に最良の出来事だったのかもしれない(挑発的な意見であることは承知している)。グルジア侵攻は結果的に、ロシアの野心に適度な屈辱を与えたからだ。ロシアの経済成長率と、経済的な自信を高めた商品価格バブルは08年の夏に弾けた。アブハジアと南オセチアの独立承認は、ロシア政府が国内経済の勝ち組と負け組みを高圧的に仕分けたことによって始まった資本流出をさらに悪化させた。この流れは少なくとも、ロシアのエリート層や政策立案者にとって、ロシアが敵意ある政策を続けた場合の代償を示したといえる。
同時に、グルジア侵攻はアメリカの政策立案者らに、コーカサス地方の共和国と関わる際には、明確な「足かせ」があることをはっきりと理解させた。当時大統領候補だったバラク・オバマは、ロシアに対して「現実主義の国際主義者」という立場で臨むことをはっきりと強調していた。この発言で、ロシアの大国としての地位や、世界の紛争地と関わる際の大国として実用性が承認されたことになる。人権問題や民主化、2国間の経済的な問題を優先的な課題として取り上げるよりも、ロシアの核不拡散や、ならず者国家の封じ込めといった政治問題における大国としての役割をアメリカが重視していることを示した。
優先事項については議論できるが、全体的に見ると、この政策は上手くいっている。グルジアとの戦争によって、ロシアもアメリカも両国間関係が冷え込んでいくことの代償を理解するに至った。瀬戸際から救われたといえる。
これは、他の国との二国間関係が思わしくない場合(たとえば米中関係)に、考えてみる価値のある議論かもしれない。
Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 2/2/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.