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災害陰謀か偶然か――連続地震を結ぶ線
南太平洋を2日続けて襲った大規模地震。関連性はなくても、これらは今後発生する破壊的な地震の予兆に過ぎない…?
悪夢の再来 スマトラ沖大地震が発生した04年から約5年で、再び瓦礫の山に(10月1日、インドネシア西スマトラ州パダン) Crack Palinggi-Reuters
またしても、南太平洋から衝撃的なニュースが飛び込んできた。9月30日にインドネシアのスマトラ島西岸沖で起きたマグニチュード(M)7.6の地震で、少なくとも1100人が死亡したというのだ(10月1日現在、国連発表による)。そのわずか1日前には、南太平洋サモア諸島沖をM8.0の地震が襲い、津波によって町全体が壊滅、200人近くの死者を出したばかりだった。
世界の終焉が近づいているなどと陰謀論を唱える前に、この2つの地震は地球で最も不安定な地域で起きたことに目を向ける必要がある。この地域は、インドネシアからチリに連なる環太平洋火山帯に属している。世界の地震のうち10回に9回がこの地域で発生しているのだ。
地震学者によると、今回起きた2つの地震の間に直接的な関連性はない。これらの地震の原因は、2つの全く異なるプレート(岩板)で丸1日近く時間をおいて起きた断層のずれだ。1つ目の地震から生じた圧力が、断層を伝わって2つ目の地震を誘発するほど大きくなったとは考えにくい。さらに、1つ目の地震からくる表面波は、2つ目の地震が起きるずっと前にスマトラにたどり着いていた。
だからといって、この2つの地震が全く関連していないというわけではない。偶然にも9月30日に英科学誌ネイチャーに発表された研究によると、04年にスマトラ沖で巨大な津波を引き起こした地震は、世界中の断層線にひずみを生じさせるほど破壊的だったという。8000キロも離れたカリフォルニアのサンアンドレアス断層にもひずみが生じていた。
この研究によれば、それ以来世界中で「異常なほど多く」の地震が起きている。つまり、特に大規模な地震は他の地震を誘発するかもしれないということだ。
カリフォルニア工科大学でアジアの地震活動を研究するある専門家は、この地域で07年に始まった地震サイクルは、今後数年間のうちにさらに大規模な災害をもたらすだろうと指摘する。「地球上で、(インドネシア西スマトラ州の州都)パダン以上に頻繁に地震の警告を受けてきた場所はない」と、彼は通信社のブルームバーグに語っている。
さらに、次に地震が起きたらマグニチュードは8.8にまで達するかもしれないと、この専門家は予想する。「この地域では過去10年間で5、6回の大規模な地震が起きている。今後それを上回る規模の地震が起きる」。 04年のスマトラ沖大地震のマグニチュードが「たった9.1」だったとすると、南太平洋諸国の政府は、災害対策について本気で考えるべきだろう。