最新記事

災害

陰謀か偶然か――連続地震を結ぶ線

南太平洋を2日続けて襲った大規模地震。関連性はなくても、これらは今後発生する破壊的な地震の予兆に過ぎない…?

2009年10月2日(金)15時51分
ケイティ・ポール

悪夢の再来 スマトラ沖大地震が発生した04年から約5年で、再び瓦礫の山に(10月1日、インドネシア西スマトラ州パダン) Crack Palinggi-Reuters

 またしても、南太平洋から衝撃的なニュースが飛び込んできた。9月30日にインドネシアのスマトラ島西岸沖で起きたマグニチュード(M)7.6の地震で、少なくとも1100人が死亡したというのだ(10月1日現在、国連発表による)。そのわずか1日前には、南太平洋サモア諸島沖をM8.0の地震が襲い、津波によって町全体が壊滅、200人近くの死者を出したばかりだった。

 世界の終焉が近づいているなどと陰謀論を唱える前に、この2つの地震は地球で最も不安定な地域で起きたことに目を向ける必要がある。この地域は、インドネシアからチリに連なる環太平洋火山帯に属している。世界の地震のうち10回に9回がこの地域で発生しているのだ。
 
 地震学者によると、今回起きた2つの地震の間に直接的な関連性はない。これらの地震の原因は、2つの全く異なるプレート(岩板)で丸1日近く時間をおいて起きた断層のずれだ。1つ目の地震から生じた圧力が、断層を伝わって2つ目の地震を誘発するほど大きくなったとは考えにくい。さらに、1つ目の地震からくる表面波は、2つ目の地震が起きるずっと前にスマトラにたどり着いていた。
 
 だからといって、この2つの地震が全く関連していないというわけではない。偶然にも9月30日に英科学誌ネイチャーに発表された研究によると、04年にスマトラ沖で巨大な津波を引き起こした地震は、世界中の断層線にひずみを生じさせるほど破壊的だったという。8000キロも離れたカリフォルニアのサンアンドレアス断層にもひずみが生じていた。

 この研究によれば、それ以来世界中で「異常なほど多く」の地震が起きている。つまり、特に大規模な地震は他の地震を誘発するかもしれないということだ。

 カリフォルニア工科大学でアジアの地震活動を研究するある専門家は、この地域で07年に始まった地震サイクルは、今後数年間のうちにさらに大規模な災害をもたらすだろうと指摘する。「地球上で、(インドネシア西スマトラ州の州都)パダン以上に頻繁に地震の警告を受けてきた場所はない」と、彼は通信社のブルームバーグに語っている。

 さらに、次に地震が起きたらマグニチュードは8.8にまで達するかもしれないと、この専門家は予想する。「この地域では過去10年間で5、6回の大規模な地震が起きている。今後それを上回る規模の地震が起きる」。 04年のスマトラ沖大地震のマグニチュードが「たった9.1」だったとすると、南太平洋諸国の政府は、災害対策について本気で考えるべきだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中