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嫌米カナダがオトナになった?

2009年9月16日(水)19時07分
ジョナサン・ケイ(ナショナル・ポスト紙記者)

「残忍な資本主義」は終わった

 最後に、カナダの社会批評家は長い間、アメリカが自由競争にまかせる残忍な資本主義に逆戻りしたと皮肉っていた。だが民主党が支配する米議会とホワイトハウスによって、アメリカでは政府が経済に果たす役割が高まっている。オバマが公的医療保険制度を実現できれば、その流れはさらに加速するだろう。

 一方、カナダでは、保守党政権が税率を低めに抑えており、政府による景気刺激策も大規模なものではない(アメリカ政府の財政赤字はGDPの13%だが、カナダはわずか3%)。カナダが小さな政府に向かい、アメリカが大きな政府に向かうことで、政府の「大きさ」をめぐる両国の溝は埋まりつつある。

 もちろん、政策の違いがないわけではない。たとえば、カナダの財界は米政府の景気刺激策に盛り込まれた「アメリカ製品を買おう」という条項に怒り心頭だ。アラスカ沖のボフォート海の漁業権をめぐる論争も勃発している。さらに、カナダ軍が11年までにアフガニスタンから撤退する予定なのに対し、オバマは米軍をさらに増派するかもしれない。

 それでも、成熟した民主国家の間にこうした違いがあるのは当然のこと。ハーパーとオバマは冷静さと分別を忘れずに、そうした課題を議論するだろう。

 カナダの「反米病」が治りつつある背景には、ワシントンとウォール街の動向が思わぬ形で大きく作用しているようだ。だが、それはカナダ自身が大人になったことの表れでもある。

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