ドイツとロシアの恋の行方
プーチンが一枚上手?
現在ロシアに支店を持つドイツ企業は約5000社。彼らにとってロシアとの取引は「死活問題」だと、ドイツ・ロシア商工会議所のミハイル・ハルムス会頭は言う。
こうした経済の結び付きは、政治に明らかな影響をもたらす。「メルケルのように輸出依存型の経済を抱える場合、外交政策は資源へのアクセスとドイツ製品の市場確保の2点に基づいて運営される」と、ロンドンの欧州改革研究所のトマス・バラセクは指摘する。
しかしドイツのソフトパワー戦略が実を結ぶかどうかは定かでない。メルケルは、ロシアがグルジアの一部から撤退してEU(欧州連合)の停戦協定に従うという昨夏の合意に賛成したが、主な仲介役を買って出たのはニコラ・サルコジ仏大統領だった。
カリーニングラードにおけるロシアのミサイル配備計画にドイツが難色を示すと、メドベージェフは昨年11月の協議で譲歩してみせた。だがこれは真の外交上の勝利ではなく、むしろ政治的なおとりだとロシアの著名な政治ジャーナリスト、フョードル・ルーキンはみる。自分で問題を起こし、自分のおかげで解決したと強調するのだ。「最初からカリーニングラードに本気でミサイルを配備するつもりはなかった」
両国の関係を深めるというドイツの政策が、ロシアのグルジアに対する武力の威嚇や、旧ソ連圏での帝国形成の勢いを弱めている気配はない。ウラジーミル・プーチン首相は「われわれとの駆け引きを熟知している」と、ドイツ外交政策評議会のヤン・テシャウは言う。「彼はわれわれの反応と根深い平和主義を知っている」
ドイツ人がロシア人の魂を理解しているというより、ロシア人がドイツ人の魂を理解しているのかもしれない。
[2009年8月 5日号掲載]