最新記事

中南米

BRICsの異端児ブラジルの実力

2009年6月16日(火)17時00分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ支局)

 これまで「巨大新興市場」という看板を積極的に受け入れることのなかったBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だが、ようやくやる気を起こしたようだ。

 6月16日にはロシアでBRICs首脳会議を開催。国際金融システムの改革や米ドルに代わる国際準備通貨の創設など、野心的な議題について話し合う予定だ。

 BRICsに国際社会のパワーバランスを変える力があるかどうかが注目されているが、本当に試されるのはブラジルの実力かもしれない。

 ブラジルは4カ国のなかで異質な存在だ。経済成長では過去10年、他の3カ国に大きく後れを取っている。ロシアや中国と違い積極的に自由貿易を支持し、インドと違って農業市場の開放を支持。このなかで唯一核兵器を保有していない国でもある。他の3カ国は「既に世界に影響力を持つ国と認められているが、われわれは違う」と、あるブラジル外交官は語る。

 ブラジルはBRICsの結束を呼び掛ける一方で、自国には他の3カ国にない強みがあると強調する。ウンゲル戦略担当相も先日、ブラジルには「(インドと違って)真の団結があり、(ロシアと違って)敵がおらず、(中国と違って)国民感情がほぼ統一されている。欠陥はあるが力強い民主主義国家だ」と豪語。ブラジルがBRICsを主導したい意向を匂わせた。

 BRICs首脳会議での一番の課題は、西側諸国が言い分に耳を傾けるかどうかではなく、4カ国が気持ちを1つに合わせられるかどうか、なのかもしれない。

[2009年6月17日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中