「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ドラの見方が変わる話題書『女性たちの韓国近現代史』が教えてくれること
韓国ドラマでヒロインの描き方に変化
日本でも大人気の韓国ドラマだが、実は「男性に守られるだけのヒロイン像」では、もはや韓国の視聴者には受け入れられないという。
1895年の「閔妃暗殺事件(乙未事変)」で知られる王妃閔氏は、朝鮮王朝第26代国王・高宗(コジョン)の王妃だが、歴史上の「悪女」としてこれまで描かれてきた。
国王が側室を寵愛したことで孤独な日々を読書で過ごした王妃閔氏は、当時男性が読むものであった漢文をも読み、世界情勢を学んでいく。それが朝鮮の運命を実際に変えることになり、「悪女」という評価につながっていく...。しかし、はたして本当に「悪女」だったのか?
近年、韓国では頭脳明晰かつ教養あふれる王妃閔氏をとらえ直す動きがあるという。ミュージカルのオーディエンスは女性が多い。王妃閔氏を主人公として描くミュージカル『明成皇后』が韓国で何度も上演されているのは、まさに男性権力者たちが記してきた「正史」への批判的な視点なのだという。
また、世界的な大ヒットドラマ『愛の不時着』には、セレブさながらのファッションを身にまとった、経済的に自立した北朝鮮の女性たちも多数登場する。このドラマには、北朝鮮の金正恩総書記の妹・与正氏と妻・李雪主夫人らが少なからず影響を与えているだろうという本書の指摘も面白い。
このように日本、韓国、北朝鮮の実在の女性たち/フィクションの女性たちが時代・時空を超えて多数登場してくるが、彼女たちに妙な気負いはない。彼女たちの挑戦は社会のためではなく、自らの人生を切り開くためのものであっただろう。それでも、それら多くの無名の女性たちによるしなやかな闘いが今日、そしてこれからの女性たちが活躍できる時代の礎になっていることを教えてくれる。
ちなみに最後に余談だが、本書のジェンダーへの視点はなぜこれほどまでにしなやかなのか?
男性中心に語られてきた歴史に異を唱えられているという近年の研究動向については言及しているが、本書はそういった既存の歴史観を真正面から糾弾するわけではない。これまで一部の人にしか知られていなかったり、ほぼ無名だった各分野の女性パイオニアたちを丁寧にとりあげているに過ぎない。
「あとがき」には「ところが研究は私を見捨てなかった」と書かれている。最後と決めた公募で常勤職を得たこと、非常勤講師時代に女子大学で行っていた朝鮮の女性をテーマにした授業「朝鮮近現代史」の書籍化が決まり、その書籍こと本書執筆中に朝ドラ「虎に翼」の考証の依頼が来たという、まさにドラマのような展開が言及されている...。
就職氷河期、高学歴者の就職難という日本の社会状況の中で、さまざまなインターセクショナリティを経験してきたであろう著者による本書は、ただただ自分が信じる道をしなやかに切り開いてきた、一人の女性研究者の物語でもあるのだ。「あとがき」もあわせておススメしたい。
※本書の目次ほか書誌情報はこちらから
『女性たちの韓国近現代史──開国から「キム・ジヨン」まで』
崔 誠姫[著]
慶應義塾大学出版会[刊]
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崔 誠姫(チェ・ソンヒ)
1977年北海道生まれ。2001年東京女子大学文理学部史学科卒業、2006年一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科特別研究員、聖心女子大学ほか非常勤講師・日本女子大学客員准教授を経て、現在、大阪産業大学国際学部准教授。専門は朝鮮近代史、教育史、ジェンダー史。著作に、『近代朝鮮の中等教育──1920~30年代の高等普通学校・女子高等普通学校を中心に』(晃洋書房、2019年)がある。2024年前期放送のNHKの朝ドラ『虎に翼』で朝鮮文化考証をつとめた。
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