日本初の「女性首相」は生まれる?...「高く硬いガラスの天井」を破るための「条件」とは
TO BREAK THE GLASS CEILING
これに対して、女性首相(大統領)が1人しか誕生していない国は、ドイツ、オーストラリア、韓国、台湾(総統)、ベルギー、スウェーデン、イタリアなどの14カ国に達し、1人の女性首相(大統領)も生まれていない「ゼロ国家」は、日本、アメリカ、フランス、スペイン、オランダなど11カ国に上る(フランスには2人の女性首相がいたが、上司は男性大統領)。
最高権力者としての女性首相・大統領の輩出と継続が容易ではないことが分かるであろう。
「最も高く硬いガラスの天井」を打ち破るには、何が必要だろうか。女性首相を生む政治メカニズムと政治文化は国によってさまざまだが、共通する要素は、前述のように「強い意志の力」と、チャレンジを後押しする客観的な政治状況が「モメンタム」として存在していることだ。
強い意志の力があってもモメンタムがなければ成就しない。あるいはモメンタムをつかみ損ねたら「最も高く硬いガラスの天井」を打ち破ることはできない。
ヒラリー・クリントンが16年の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領に敗北した際に「ガラスの天井」に言及したのはまさにそうした文脈であり、ヒラリーはトランプという異形の千両役者に勢いを阻まれたとも言えよう。
日本ではこれまで、土井たか子衆議院議長、扇千景参議院議長、山東昭子参議院議長という3人の女性が衆参の議長に就いている。
特に野党社会党の党首であった土井たか子は、89年の参議院選挙で自民党を過半数割れに追い込んで「山は動いた」と快哉を叫び、選挙後の参議院で女性初となる内閣首班指名を受けた。
しかし衆議院の優越によって海部俊樹自民党総裁が首相に選出され、土井はその後、93年に衆参を通じて初となる女性衆議院議長に就任して政治キャリアを終える。
「女性副首相」という第一歩
「意志の力」と「モメンタム」という点では、小池百合子東京都知事あるいは田中真紀子元外相を想起するかもしれない。共に世論の動向、時代の要請、時流を見極める天才的な目を持っており、人並み外れた「意志の力」を有する女性政治家だ。
田中氏は父親の田中角栄元首相譲りの圧倒的な突破力、そしてモメンタムを形成する力を有していた。小池氏は7月の都知事選挙で蓮舫候補や石丸伸二候補を退ける圧勝を果たしたが、選挙戦で小池氏や蓮舫氏が「女性だから」という点は争点にならなかった。
それはひとえに小池氏が08年の自民党総裁選に史上初の女性候補として出馬を果たし、16年には初の女性都知事に就任、2期8年を務めていた実績が背景にあったからに違いない。