日本初の「女性首相」は生まれる?...「高く硬いガラスの天井」を破るための「条件」とは
TO BREAK THE GLASS CEILING
それ相応の資金力が必要となることもある。女性であることは有利にも不利にも働くが、前例のない女性首相が誕生するには、「最も高く硬いガラスの天井」を突き破るような格別の「強い意志の力」と、客観的な時流にかなった「モメンタム(勢い)」を自らに引き寄せることが必要となる。
マーガレット・サッチャーが79年に英国史上初の女性首相に就任した当時、英国議会(下院)における女性議員は635人中19人(3%)にすぎなかった。
しかし野党保守党の党首だったサッチャーは労働党政権を倒す「強い意志の力」で総選挙に臨み、高インフレにあえぐ国民が政権交代を求める「モメンタム」を取り込むことに成功し選挙に圧勝、首相の座をつかんでいる。
女性首相の代名詞とも言えるサッチャー以外に、首相あるいは大統領に就任した女性はスリランカのシリマボ・バンダラナイケ首相(60年)から、イタリアのジョルジャ・メローニ首相(22年)、タイのペートンタン・シナワット首相(24年)に至るまで、その数は100人近くに達している。
その内実はさまざまだ。
例えばインディラ・ガンジーは、父親であるインド初代首相ジャワハルラル・ネールの病死後、その政治的威信を受け継いで66年に首相に就任。強権政治の批判を浴びながらも国民会議派を率いて通算16年近く首相を務めた。
彼女の暗殺後に政権を引き継いだのは息子ラジブ・ガンジーであり、親子3代にわたる「ネール・ガンジー王朝」と呼ばれた名望家支配を築き上げる政治的パワーを持っていた。
女性首相の実態を数で見ると
これに対してニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は17歳で労働党に入党、28歳で国会議員に初当選、37歳で首相に就任、42歳の昨年「もう力が残っていない」として辞職し引退するという、早馬で駆け抜けるような政治家人生を送った。
女性のエンパワメント(本来の力を開花させること)に関する一つのモデルケースとして、世界の女性政治家に強い影響を与え、いまだに「ジャシンダマニア」と呼ばれる熱狂的な崇拝者が多い。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は24歳で国会議員に初当選。33歳でデンマーク初の女性首相ヘレ・トーニングシュミットに雇用相として抜擢され、法相を経て、37歳で野党に転落した当時の社会民主党の党首に就任。19年に41歳で首相に就任し、今に至っている。
「ガラスの天井」が頭上を覆いかぶさるより早く階段を駆け上がり、その勢いで「最も高く硬いガラスの天井」を突き破るというパターンが2人に共通している。