日本初の「女性首相」は生まれる?...「高く硬いガラスの天井」を破るための「条件」とは
TO BREAK THE GLASS CEILING
日本の女性議員(衆議院)の比率は10.8%で、183カ国中160位に甘んじている。世界経済フォーラムが公表する「ジェンダー・ギャップ指数2024(政治分野)」でも、日本は146カ国中113位にとどまっている。
21年に「政治分野における男女共同参画推進法」が施行され、各政党の女性候補者擁立が進むなどの改善が見られるとはいえ、日本における女性の政治参画の実態はお寒い状況と言うしかない。
しかし、だからと言って、女性国会議員の数を増やせば女性首相が誕生するとは限らない(女性首相が誕生すれば政治におけるジェンダーギャップが解消するわけでもないが)。
例えばスペインは現在、下院350人中、女性議員は155人(44.3%、18位)に達するが、女性首相はこれまで生まれていない。これに対して韓国は国会議員300人中、女性議員は60人(20%、114位)にすぎないが、13年に朴槿恵(パク・クネ)大統領を生んでいる。
議院内閣制を採用する日本では、首相は「国会議員であること」だけが憲法上の要件だ。しかし、解散が衆議院にのみ認められることから、首相は衆議院議員でなければならないという政治慣行(不文律)がある。
つまり首相になるには与党の衆議院議員であることが実際には必要であり、1996年の小選挙区比例代表並立制導入以降は、比例復活ではなく小選挙区で当選を果たすことも実質的要件に加わった。
その小選挙区で当選し続けることは並大抵のことではない。地元選挙区での地盤培養活動として冠婚葬祭、盆踊り、運動会などの行事に顔を出し、住居の斡旋、就職の世話、紛争解決などの細々とした陳情処理をこなし続けるのは普通の光景だ。
女性議員はそれに加えて、「婦人部・婦人後援会」との間合い・関係性、男性が多い地方政治家(県議や市議)との付き合い、支持を餌とした男性支援者によるセクハラやパワハラ(票ハラ)といった問題にも直面する。
固定的なジェンダー役割分担を前提とするような保守的風土の選挙区では、ストレスはより顕著になる。
いざ当選しても永田町には体育会系男社会の政治文化が色濃く残り、女性議員は「女性」議員として振る舞うことが暗に、あるいは当然のごとく要求される。ブレーンとなるような霞が関官僚に女性幹部は少ない。
女性政治家を取り巻く環境は過酷であり、「ガラスの天井」は日本の女性政治家が政治キャリアを積み重ねていく困難性そのものの中にある。
その上で、自民党総裁選に出馬するには推薦人20人の確保が要求される。自力で推薦人を集めるにせよ、重鎮(キングメーカー)の手札を演じるにせよ、政治的人間関係を構築し維持していくには途方もないエネルギーが必要となる。