『マダム・ウェブ』マーベルでもDCでもなくソニーが作った、駄作にして傑作
Pure Superhero Camp
一周回って楽しくなる
率直に言って、『マダム・ウェブ』は駄作だ。本当にひどい。クモのような黒いマスクをかぶった悪役は、セリフの大部分を声の似ていない俳優が吹き替えたかのようだ。
ユーモアのかけらもない『モービウス』のエンディングでは、吸血鬼になったモービウス(ジャレッド・レト)と、『スパイダーマン:ホームカミング』の世界から(何の説明もなく)転送された武器商人のバルチャー(マイケル・キートン)が、タッグを組むような約束をした。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、主人公エディ・ブロック(トム・ハーディ)が見ているテレビにMCUの世界に入り込んだかのような映像が流れ、ソニーのユニバースとの実現しそうにないクロスオーバーを示唆して終わった。そして『マダム・ウェブ』も、次回作は(少なくとも今回よりは)良くなると思わせる。
キャシーは、偶然出会った3人の少女(シドニー・スウィーニー、イザベラ・メルセド、セレステ・オコナー)が黒いマスクの男エゼキエル・シムズ(タハール・ラヒム)に殺される未来を見てしまい、彼女たちを守ろうとする。キャシーの亡き母親と共にアマゾンでクモを研究していたエゼキエルもまた、ペルーの部族が崇拝するクモにかまれて予知能力を手に入れ、成長した3人に自分が殺される未来を見ていた。
キャシーが見る未来でも、エゼキエルが見る未来でも、3人の少女はクモのようなスーツを着て悪と戦っている。背中からクモの足のような機械のアームが突き出て、手首から電気の網を放つ。
もっとも彼女たちの未来のイメージはぼんやりとしていて、映画を見た後にネットで検索せずにいられなかった(ちなみに、2人は後にスパイダーウーマンに、1人はスパイダーガールになる)。
新進の若手女優たちにすれば、スーパーヒーロー役に抜擢されたと聞いたのに、撮影が始まってみれば物語の9割は女子高生としてはしゃぎ回り、悪役に首をへし折られる。ジョンソンもまた、自分がこの役を演じていることが信じられないとでもいうように、全てのシーンで場違いな感じを漂わせている。
多くのスーパーヒーロー映画は、見ないという選択肢はないとばかりに観客に迫ってくる。しかし、『マダム・ウェブ』を見なくても、映画館で過ごす愉快な2時間を逃すだけのことだ。
MCUの主流作品は自意識過剰で皮肉や小ネタがあふれているが、『マダム・ウェブ』は徹底して無自覚で、とことんばかげている。製作陣が意図した面白さではないかもしれないが、だからと言って面白くないとは限らない。
MADAME WEB
『マダム・ウェブ』
監督/S・J・クラークソン
主演/ダコタ・ジョンソン、タハール・ラヒム
日本公開中