「タイミング悪すぎ」...ディズニーを悩ませる、イスラエル人女戦士サブラの『キャプテン・アメリカ』参戦
The Trouble with Sabra
「平和の使者」に変身?
本誌はマーベル・スタジオにコメントを求めたが、回答はなかった。
昨年サブラの登場に対してバッシングが起きると、同社は声明で次のように述べた。「われわれのキャラクターと物語はコミックに着想を得ているが、映画化の際は現在の観客に合わせて創造し直す。サブラについても新しいアプローチを取っている」
サブラに関しても、イスラエル・パレスチナ間の根強い対立に関しても、コミックの描写は細やかさを欠いていた。
イスラエルの漫画家ハガイ・ギラーがタイムズ・オブ・イスラエル紙で、「マーベルはろくに調べず、イスラエルをステレオタイプに描いた」と批判したとおりだ。
サブラは初登場回でハルクがアラブの武装組織を支援していると誤解し、彼を攻撃する。やがてパレスチナ人の少年が彼らの戦闘に巻き込まれて死亡。
ハルクは「この子が死んだのは、彼の民族とおまえの民族が土地を奪い合うからだ。おまえたちが分かち合わないせいでこの子は死んだのだ」と、サブラに説教する。
この一件で慈悲に目覚めたかに見えたサブラだが改心は長続きせず、その後もアラブ系のキャラクターに対する色眼鏡は変わらなかった。
95年のコミック『ニュー・ウォーリアーズ』ではパレスチナ人を恨む動機の説明として、幼い息子をテロで殺された過去が付け加えられた。
マーベルの単細胞な愛国主義は1941年のキャプテン・アメリカ誕生までさかのぼる。だがキャプテンはその後コミックでも映画でも何度も自分の正義を疑い、見つめ直した。マーベルもコミックを映画化する際は、世論や政治の変化に合わせてキャラクターをアップデートした。
例えば60年代の冷戦下に登場したレッド・ガーディアン。キャプテン・アメリカに対抗してソ連が生み出した超人兵士だが、2021年の『ブラック・ウィドウ』ではデビッド・ハーバーが初老のレッド・ガーディアンを哀愁を交えて演じ、笑いを誘った。