私たちは全員「キャリー・ブラッドショー」だった...人気の秘密は『SATC』でいちばん「普通」だったこと
We Are All Like Carrie
あなたも私もキャリー
こうした現象は『SATC』に限らず、性格診断に使われるような小説やドラマにはあらかた当てはまる。
例えば小説の『若草物語』。あの四姉妹を使った性格診断テストなら、誰だって次女のジョーか四女エイミーと判定されたいだろう。姉妹の中で、内面の動きが全編を通じてきちんと描かれるのはこの2人だけなのだ。
僕は映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を見た後で恋人に「君はメグに似てるね」と言ってしまい、険悪な雰囲気になった(ジョーと長女メグの名前をうっかり取り違えたのだ)。人様をメグ呼ばわりするのは、「君は人間じゃない」と言うに等しい。
人はみなキャリーなのだという確信を、HBOも深めたらしい。
『新章』はシーズン2が始まったばかりだが、シーズン1では50代に入った登場人物たちがジェンダーやポッドキャストをめぐる今どきの常識についていけず、あたふたした。
ミランダは中年の危機に直面し、シャーロットは黒人の同僚との接し方で恥をかき、サマンサは登場しない。
そんななかキャリーは突然夫を亡くし、喪失の悲しみに向き合った。『SATC』史上、これほど普遍的で心の琴線に触れるストーリーラインも珍しい。
この世に大切な人を失う悲しみと無縁の人はいない。誰より生身の人間に近いキャリーに、このストーリーが割り振られたのは当然だろう。
ほら、キャリーはあなたにそっくり。ということは残念ながら、あなたは僕にもそっくりなのだ。