2つのドラマでも真実に迫れない、「キャンディ・モンゴメリー事件」の怪
Two Types of Candy
抑圧されてきた女性たち
『ラブ&デス』の解釈は、実際の裁判でキャンディの弁護士が成功させた弁護に沿っている。キャンディがベティを殺したのは、ベティの夫アランと不倫していたことをめぐる嫉妬からではなく、幼い頃から女らしさを強いられてきた抑圧が蓄積されていて、ベティに襲われた瞬間、制御できない怒りが爆発したという主張だ。
ドラマの中のセラピストによれば、キャンディは他人の評価を過剰に気にするように育てられてきた。一方、ベティは深刻な不安障害と産後鬱に悩んでいるが、誰も深刻に受け止めてくれない(そこにも視聴者は親近感を抱く)。
キャンディは弁護士から裁判に備えてさらに保守的な髪形にするよう指示され、ショートカットにする。迫害されてきた中流階級の女性らしく振る舞え、というわけだ。
ただし、おのを41回振り下ろす光景はあまりに凄惨だ。『ラブ&デス』は視聴者に登場人物への共感を求めながら、ブラックユーモアのような演出がドラマ全体をわざとらしくしている。
おのを握ったキャンディは狂乱状態だ。確かに、郊外に暮らす完璧なママになろうと努力する女性は、誰でも頭がおかしくなりそうだろう。しかし、キャンディの手によってもたらされたベティの悲惨な結末は、ワインを手放せない短気な母親というジョークで片付けることはできない。
キャンディを演じるエリザベス・オルセンは、自暴自棄の主婦が残忍な殺人者になることへの共感と、ブラックジョークのような描き方とのギャップを埋めようと努力している。しかし、『ラブ&デス』の底の浅い演出は、オルセンの迫真の演技をもってしても、殺人に至る過程が真に迫って見えない。
一方の『キャンディ』は、1980年にベティの自宅で起きた出来事を、当時の女性たちの苦悩の結果として描こうとはしない。
だまし絵のような異質さ
ジェシカ・ビールが演じるキャンディは、実在のキャンディが愛用していたものにそっくりなオーバーサイズの眼鏡とカーリーヘアで、どこか異質な存在に感じられる。ウサギの絵がアヒルにも見える目の錯覚のように、晴れやかな輝きとグロテスクさの間を揺れ動く。