「女性たちが抗議行動の先頭に立っていることが誇らしい」イラン出身女優が語る民主化
‘It’s Just a Matter of Time’
アミニの死を受けて世界中に広がった抗議デモの先頭には女性たちが立つ(写真はアルゼンチンでの抗議行動) AGUSTIN MARCARIANーREUTERS
<民主化は「時間の問題」と語る、ショーレ・アグダシュルー。革命前にテヘランで民主化デモに参加した米女優が新世代の活動家に見る、「変革を実現させる力」とは?>
ショーレ・アグダシュルー(70)はイラン出身の米国女優だ。映画『砂と霧の家』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、HBOのドラマ『サダム 野望の帝国』ではエミー賞助演女優賞を獲得した実力派として知られる。
彼女は首都テヘランで生まれ育ったが、1979年のイスラム革命の直前に国外へ脱出した。そして今、彼女は祖国の騒乱に胸を痛めている。
去る9月13日、イランでは22歳の女性マフサ・アミニがヒジャブ(頭部を覆うスカーフ)を適切に着用していなかったとして道徳警察に拘束され、その後に死亡した。
当局側はアミニの死因を急な心臓発作と発表した。だが遺族らは、警官に殴られた彼女が昏睡状態に陥り、3日後に死亡したと反論している。
この事件が伝わると、イラン全土で激しい抗議行動が始まった。路上でヒジャブを燃やす女性。長い髪を切り落とす女性。そんな動画がネット上に拡散し、海外からも怒りの声が上がった(その後、当局はインターネットやSNSを遮断した)。
いわゆる「イラン核合意」の復活に向けて協議を進めていたアメリカ政府も、この事件を受けてイランを改めて非難し、新たな制裁を科す考えを表明している。
もはや交渉は無意味
長年の活動家でもあるアグダシュルーは、ここまで来たらイラン政府との交渉は打ち切るべきだと考える。
「今はもう、核戦争がどうだとか、あの国がどれだけウラン濃縮を進め、核爆弾の製造に近づいているかを論じている場合じゃない」と彼女は言い、こう続けた。
「今のイランでは大勢の若者が、自分たちの権利のために立ち上がり、その戦いに命を懸けている。こんなときにイラン政府と交渉しても意味がない」
「どうせ、あの国の政府は妥協しない」とも彼女は言う。
「彼らには若者の声に耳を傾ける意思も、イランをより良い国にする意思も、民主化に応じる意思もない。あの国では聖職者が独裁者だから。国民が彼らを追い出さない限り聖職者の独裁が続いていく。政府と交渉しても無意味。イスラム共和国を終わらせるしかない」
狂信的な暴力に立ち向かうのは命懸けだ。そのことを、アグダシュルーは身をもって知っている。革命の前年(78年)、彼女もイスラム革命に反対するデモに加わっていたからだ。