20年間の進歩と希望は「無」に帰した──アフガン女性たちの地獄
PRISONERS IN THEIR HOMELAND
ただし、女性の地位に対する古い考え方は国中に深く根を張っていた。農村部の女性は都市部の女性ほど自由を手にできなかった。
それでも女性の生活はいいほうへと大きく変わった。この進歩はタリバンの復権がなければ続いていただろうとジャファリは考える。だが今は「女性が完全に社会から切り離されてしまう」という彼女の危惧が現実のものになりそうな状況だ。
うわべだけだったタリバンの融和姿勢
1年前、米軍が混乱のうちに撤退した直後、タリバン政権は表向きは融和的な姿勢を見せていた。ザビフラ・ムジャヒド報道官も、女性に対する差別のない、全ての人に平等な政権だとアピールしていた。「シャリーア(イスラム法)の枠内で」とか「われわれの文化の枠内で」というただし書きは忘れなかったが。
それはつまり、大半の女性が働くことを禁じられるという意味だ。これでは女性の稼ぎで生活している家族は貧困に突き落とされてしまう。
さらに、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、この国は財政危機に瀕しているため、働いている女性も適切な賃金が支払われない場合がある。なんとか働き続けていても、厳しい服装規定を守らなければ解雇される。
タリバンは公式声明で、女性は家の中にいればいいと忠告している。「ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭髪を覆うスカーフ)に従っているという最も分かりやすい印は、家から出ないこと」だからだ。
家の外では女性は顔を覆わなければならず、地域によっては親族の男性が同伴しなければならない。女性が服装規定に違反すると、親族の男性が罰金や懲役を科される。国連によると女性の10人に9人がドメスティックバイオレンス(DV)を経験している国では、こうした状況は暴力を助長しかねない。今年3月、タリバンは制服がイスラム文化に従っていないとして、女子中高生(7年生以上)の通学再開を当日になって撤回した。
アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」だと、HRWの女性の権利局暫定共同局長ヘザー・バーは言う。バーは今年1月に、女性と少女が直面している危機は「終わりが見えないままエスカレートしている」と警告し、タリバンの政策が、この国から「最も貴重な資源」の1つを奪っていると指摘した。
アフガニスタンは今、あらゆる資源を必要としている。この1年で経済は崩壊した。タリバンが再び権力を握った直後に、欧米諸国はアフガニスタン中央銀行の国外資産90億ドル以上を凍結した。タリバン幹部への制裁はインフレを加速させ、基本的な生活必需品の価格が高騰している。多くの家庭が生活のために財産の大部分を売り払い、若い娘を金と引き換えに見合い結婚させている。