最新記事

ファクトチェック

「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専門家、じゃああの汚れの正体は?

2022年06月29日(水)16時40分
田中ゆう

YouTube/Eyewitness News ABC7NY

<巷で話題の足裏パッド(デトックスフットパッド)。毒素を排出する科学的証拠はない。むしろ効果がないことが証明されている...>

足裏パッドを貼って一晩寝ると、あら不思議。パッドにべっとりと「毒素」が排出されている!

巷で流行中の足裏パッド(デトックスフットパッド)。美容に敏感な界隈では5年前くらいからじわじわと広まっていたが、ここにきてTikTokerやYouTube配信者がこぞって取り上げている。

foodpad-fc-220629nww02.jpg

翌朝剥がすと真っ黒に変色している YouTube/Eyewitness News ABC7NY

パッドの使用前後の汚れのビジュアルインパクトが強く、SNSでは「毒素」を吸い出し、むくみが取れる、と謳う投稿が多く拡散されている。

4月21日にシェアされたFacebookのある投稿(現在は閲覧できなくなっている)にはこうあった。「クレンジングフットパッドは、寝ている間に貼るだけで速い効果を得られます」「炎症を抑え、体をほぐし、すべての不純物を取り除いて身体を解毒します」

ここでひとつの疑問が浮かぶ。

この「毒素」とされる汚れの正体だ。たった一晩で、体に溜まった悪いものが足裏のパッドに吸い込まれるものか? と。米USA TODAYが「毒素」の真相を探った。

信頼できる証拠はありません

専門家曰く、足裏パッドが体内の毒素を排出することを裏付ける、信頼できる証拠はない。

そう、この足裏パッドの効能に関する科学的データはほぼ皆無なのだ。

米イリノイ州にあるノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の皮膚科副医長、ムラド・アラム博士は、「(足裏パッドの)一番のウリは、重金属などの毒素を排出するというものだが、これはほとんど証拠がない主張だ」と語る。

また足裏パッドが黒く変色するのは、一晩で体から排出された毒素だとSNSで広まる噂についても否定している。

「色が変わるのは、汗が足裏パッドに含まれる化学物質と反応したとしか考えられない」と、アラム博士。

「足裏パッドには酢のような化学物質が含まれており、おそらく足裏パッドに影響を与える水分(汗)との化学反応に過ぎない」

効果がないことを証明する証拠はある

Journal of Heavy Metal Toxicity and Diseases誌は2018年に、足裏パッドが金属を体外に排出するかどうかを調査したレポートを掲載している。

実験では53人の参加者を対象に、使用前と使用後のパッドに含まれる金属の有無を調べた。結果、「足裏パッドは金属の排泄を誘導しなかった」と結論づけた。

同様の報告は他にもある。2008年、米国のナショナル・パブリック・ラジオは、使用済みのフットパッドと未使用のフットパッドを研究所に送り分析したが、使用済みと未使用のパッドに大きな変化は見られなかった。

「足は解毒器官ではない」

人間の体には、外部機器を使わなくても、不要な物質をろ過して排出する機能が備わっていると、専門家は指摘する。肝臓、腸、腎臓、そして表皮(皮膚)にある汗腺が毒素を除去している。

ジョージタウン大学薬学・生理学教授のAdriane Fugh-Berman博士は、「足は解毒器官ではない」と言う。「汗からは、腎臓や肝臓に比べて老廃物はほとんど排出されません」

2010年、米国連邦取引委員会の要請を受けた連邦判事は、『Kinoki Detox Foot Pads』の販売業者に販売禁止を言い渡した。連邦取引委員会によると、「足裏パッドが体内の有害物質を除去するという科学的根拠があると偽っていた」という。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること