最新記事

BOOKS

あの「ニューヨーカー」誌の挿画家エイドリアン・トミネとは?

2022年06月24日(金)08時07分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

原書も読み合わせたい

まずはじめに、なぜこの本の装丁がゴムバンド付きハードカバーの方眼紙ノートであるかということだ。実は最後のシーンでその理由が明らかになるのだが、それも含めて心地よい余韻が残るのも本書の味となっている。

次に線画の美しさである。これはデジタルツールによるものなのか? それとも特別な文具を使っているのだろうか、と。

実際、読者からの質問は多いようで、自身のインスタグラムに仕事道具を紹介しているが、日本製の文房具も何点か目に付く(何度が来日しているようなので、その時に買いためているのだろうか?)。

そしてこれはトミネ自身にはまったく関係のないことだが、邦訳が翻訳書とは思えないほど自然で洗練されているため、思わず原書の英文も確かめたくなってしまう点だ。

デジタルデバイスの普及で、もう何年も手書きでまとまった文章を書くことがなくなった人は多いはず。そんな時に、本書はトミネの線画の美しさに見惚れ、自分でも手書きしてみたい衝動に駆られてしまう。時間に追われる毎日に、別の時間軸を与えてくれるようなノスタルジックな作品である。


 『長距離漫画家の孤独』(国書刊行会)
 エイドリアン・トミネ/長澤あかね・訳

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポーランド、米と約20億ドル相当の防空協定を締結へ

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画

ビジネス

独CPI、3月速報は+2.3% 伸び鈍化で追加利下

ワールド

ロシア、米との協力継続 週内の首脳電話会談の予定な
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:引きこもるアメリカ

特集:引きこもるアメリカ

2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?