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イギリスチャールズ皇太子、不法移民のルワンダ移送計画は「ぞっとする」と政府に不満──関係者リーク
REUTERS/Henry Nicholls
<国王は「君臨すれども統治せず」のイギリスで、異例のリーク。ルワンダ移民計画はそれほどまでにチャールズ皇太子の気分を害すもの>
チャールズ皇太子が英政府とルワンダの間で結ばれた「移民と経済発展パートナーシップ」について、懸念を示しているという。
英国の国王は何をしても許されるという存在ではない。その権限を制限したマグナ・カルタ(1215年)や権利の章典(1689年)などを経て、「君臨すれども統治せず」の立憲君主制が確立されていった。
基本的に王室は議会・政府に関与しない。そして公での政治的な発言は、女王はもちろん王室メンバーも控える。
しかし件の不法移民移送協定は、王室によほどよろしくない印象を与えたようだ。
タイムズ紙とデイリーメール紙は、ある情報筋の話として、チャールズ皇太子が密室でこの政策に反対しているのを聞いたと明かした。不法移民とはいえルワンダに強制移送する政府の方針を内々に批判し、その行為を「ぞっとする」と表現したという。
移送された移民らはルワンダで亡命申請手続きを行うことになる。最初のフライトは、6月14日(現地時間)に出発する可能性がある。
今年だけで1万人以上が到着
政府による不法移民の強制送還政策は、フランス北部から小舟で海峡を渡ろうとする人々を防止する策として、4月に導入された。今年に入り、すでに1万人以上が英国に到着している。
4月14日(現地時間)に発表されたこの「移民と経済発展パートナーシップ」に則ると、不法移民らは4000マイル(約6440キロメートル)離れた場所に空輸されることになる。
この政策は人権上の理由から多方面からの厳しい非難にさらされ、6月10日には国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、このフライトが英国の法的義務に違反しているとして中止を求めるよう呼びかけた。
UNHCRで保護担当高等弁務官補を務めるジリアン・トリッグスは、「あまりにひどい。国際法および難民法違反だ」と厳しいコメントを発した。
「政府のやり方はひどいと思う」
関係者によると、「チャールズ皇太子はこの政策に失望する以上に深く失望した」そうだ。「政府のやり方はひどいと思うと言っていた。彼が政府の方向性に納得し共感していないことは明らかだ」
イギリス本国の首相とイギリス連邦の首相が一堂に会す、英連邦首相会議は、6月下旬にルワンダの首都キガリで開かれる。英国からはエリザベス女王の名代としてチャールズ皇太子が出席する予定だ。
チャールズ皇太子とカミラ夫人の公邸クラレンス・ハウスの広報担当者は次のように話す。「私たちは、皇太子が政治的に中立であることを改めて表明する以外、匿名の私的な会話とされるものについてコメントするつもりはありません。政策の問題は政府が決定することです」
しかし、チャールズ皇太子が移民移送協定に反対していたという点について、否定していない。
対する政府の広報担当者はこう言う。「我々は、このルワンダとの移民移送に関する合意が国内法及び国際法に完全に準拠していることを確信しています」
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