「どんどん挑戦して」──女優ミニー・ドライバーが女性たちに伝えたいこと
Not Staying in One Lane
映画やテレビで活躍するドライバーは歌手・声優の仕事に加え、本も執筆 MARK WILLIAMS
<ハリウッドを揺るがした大物プロデューサーのセクハラで傷ついた若き日とシングルマザーとしての子育て、そして新型コロナによる母の死について語る。また、女性たちへのメッセージも>
1997年公開の映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のスカイラー役でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたミニー・ドライバー。
今年5月に出版した自伝的エッセー集『マネジング・エクスペクテーションズ』では、歌手になりたかった少女時代やイギリスの寄宿学校での思い出から新型コロナウイルスで最愛の母を亡くした喪失感まで、起伏に富んだ半生を魅力的な筆致でつづっている。
息子ヘンリーの誕生は最初から最後まで驚きの連続だったとか。ヘンリーの父親はドラマ『ザ・リッチズ』で一緒に仕事をした脚本家だが、彼とはすぐに別れ、ドライバーは1人で息子を育ててきた。
予期せぬ出来事や困難な試練に見舞われながら、自分で道を切り開いてきたドライバーに本誌メレディス・ウルフ・シザーが話を聞いた。
――(長年女優に性的暴行を加えていた)大物プロデューサーのハービー・ワインスティーンに性的魅力がないとけなされて、危うくスカイラー役を逃しそうになった話が著書に書いてあるが、今のハリウッドは当時と変わった?
#MeToo(私も)運動で変わったと思う。あらゆる虐待的行為の被害者を守る仕組みができて、加害者の責任もある程度問われるようになった。
ただ、告発にはかなり勇気が要る。「文句を言わずに俺の言うことを聞く女はこの業界にはごまんといる」などと脅すような風潮が今も根強くあり、干される覚悟がないと声を上げられない。
――ワインスティーンに口汚くけなされたことで、当時まだ若かったあなたは自信を失ったのでは?
ワインスティーンはキャスティング担当に私を外せと言い、脚本家や共演者にもその話が伝わった。私の耳に入ったのは撮影が始まってから。あんな大物にケチをつけられたのに起用されたのだから自信を持っていいと言われたが、ものすごく傷ついた。
問題は何を信じるか。大物にけなされても自分の可能性を信じるか。それとも自分には価値がなく、今はもてはやされていても、そのうち化けの皮が剝がされると思い込むか。
私は前者であろうと努めたけれど、結局は後者になった。彼は「あの女じゃ勃たねえ」と言った。当時26歳だった私の頭の中はそう言われたことでいっぱいになり、自分は性的魅力に欠けるとその後何年も思い込んでいた。
――2008年生まれのヘンリーは13歳。もう小さな坊やではなく、思春期の少年だ。
産み落とした瞬間から子供は私のものではなく、一個の別人格だと思ってきた。それが無条件の愛情だと思う。