英会話で「本当に英語が身につく」は不可能。だが昔の日本には優れた外国語学習法があった
子どもが英語を身につける順序は?
英語の基礎技能と言えば「読む、書く、聞く、話す」です。これを日本国内で英語を学ぶ学習者用に並び替えると「聞く、読む、書く、話す」となります。「聞く」「読む」はインプット。「書く」「話す」はアウトプットとざっくり区別してください。
子ども時代(幼児〜小学生)の英語学習の重点は「インプット」です。すなわち英語を「聞く」「読む」により多くの時間を割き、英語を聞き取る「耳」と、英語を正しく発音する「口周辺の筋肉作り」に専念するのです。
では、インプットの具体的な方法をご説明します。
英語のわらべ歌(ナーサリライムやマザーグースなど)を聞かせたり、英語のアニメやYouTube動画を視聴させます。この段階では、英語独特のリズムや音に慣れさせることが目的ですから、理解や記憶は一切求めませんし、無理にリピートさせる必要もありません。毎日30分など、時間を決めて英語を視聴させるとルーティン化しやすくなります。
次にフォニックスを通して英語を「正しく発音する」練習を行います。フォニックスというのは日本語の「ひらがな」に該当するもので、アルファベット26文字の「音」を教える指導です。「A=ア、B=ブッ、C=クッ」という要領で、文字と音の関係を子どもに覚えさせます。
フォニックスで発音を覚えたら、次はサイトワーズと呼ばれる頻出単語を正しく読む練習です。サイトワーズは学習効率が高く「頻出100語」を覚えるだけで、全ての活字化された英語(絵本から専門的な論文まで)の約50%が、そして「頻出300語」を学ぶとあらゆる英語の70%が読めるようになると言われています。
サイトワーズの次のステップがセンテンス読みです。センテンス読みは「リーダーズ」と呼ばれる「超簡単で短い本」で行います。リーダーズは1ページに1〜2行、全体でも16〜32ページ程度の薄い本で、英語圏の子どもの読書教育や英語を第二言語で学ぶ子どもの教本として広く活用されています。私の経験からもリーダーズの多読練習が日本人の英語力向上には最も効果があります。
以上のように、段階的に「インプット」を重ね、子ども時代に「耳」と「口」を鍛えておくと、その後に続くアウトプットもスムーズ、かつ、高度に発達させることができるわけです。
江戸〜明治時代の日本には優れた外国語学習法があった
その昔、江戸時代の寺子屋や藩校での教育は、漢文(中国語)で書かれた本の素読が中心でした。素読というのは意味を考えずにひたすら声に出してテキストを読むシンプルな学習法です。寺子屋や藩校では先生が声に出して読み、子どもたちがリピートします。家に帰ってからは自分で繰り返し音読して練習します。
福岡藩の儒学者、貝原益軒は「四書の素読が終われば、どんな漢文でも読めるようになる」と言っています。(四書というのは儒教の教書のうち「論語」「大学」「中庸」「孟子」のことです)
素読は現代の英語学習に応用しても大きな効果が期待できます。内容理解を求めず、ひたすら英語を読む練習をする。英語がスラスラと早いスピードで読めるようになれば、次のステップである内容理解や会話も楽に実現できるのです。