「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている
イギリス含め16カ国の国家元首を務めるエリザベス二世 John Stillwell/Pool- REUTERS
<祖先に対して行われた残虐行為、そしてこの歴史から始まり、今日我々に対して続いている暴虐に対する正義のために働きかけなければならない。「話し合い」の時は終わり、「行動」が必要だ>
ジャマイカは、エリザベス女王を国家元首から解任するプロセスにすでに着手しようとしている。英ウィリアム王子夫妻が一週間の日程でカリブ海周辺諸国を歴訪するタイミングこのニュースが報じられた。ジャマイカは2016年4月15日にエリザベス女王を国家元首から解任する憲法の改正案を提出している。
解任プロセスは変わらず進める予定だと政府関係者は強調し、イギリス連邦を脱却する意思は固いことが伺える。首都キングストンでは、共和制移行を主な任務とする幹部が任命された。
そんな中でウィリアム王子夫妻は3月22日にジャマイカ入りしたが、夫妻を迎えたのは暖かい地元民衆ではなく、過去の罪を償うよう求めるデモ隊だった。夫妻の今回の歴訪は、エリザベス女王在位70年をたたえる記念行事だったが、英国君主初の「プラチナ・ジュビリー(70周年の記念式典)」を英連邦諸国と共に祝賀するという思惑は外れた。
ジャマイカは手を緩めない。アンドリュー・ホルネス首相はテレビで、同国は独立国として「前進」しているとウィリアム王子に語った。昨年のバルバドスに続き、立憲君主制を廃止し、共和制に移行する可能性を示唆したのだ。
民衆からもジャマイカの立憲君主制に反対する声は多い。キングストンの小売店経営者は「エリザベス女王は、ジャマイカではなく英国の女王だ。英国にとどまるべきだ」と物怖じせずに主張した。
カリブ海周辺諸国の反応は
続く3月24日〜25日にウィリアム王子夫妻はバハマを訪問。バハマ国家賠償委員会は、英王室は奴隷の「血と汗と涙」から利益を得てきたとして賠償を要求。英国に植民地化された地域は何世紀にもわたり「略奪・搾取された」結果、今なお開発途上にあると訴えるなど、ここでも辛辣な言葉を受け取った。
バハマでの最後の訪問地では、キャサリン妃が家族でバハマのビーチに旅行することを宣言。バハマは故ダイアナ妃のお気に入りで、特にチャールズ皇太子との離婚後にしばしば訪れていたとされている思い出の場所ではあるが、奴隷の「血と汗と涙」から利益を得たとして賠償を求められる当事者の立場でバカンスに行けるものだろうか。
独立60年の気迫
ジャマイカの歴史を辿ると1655年、クロムウェルの時代にイギリスに征服され、以後1958年までその植民地とされ、特に砂糖は西インド最大の産地となり、アフリカとの三角貿易で運ばれた黒人奴隷が砂糖プランテーションの労働力とされた。その後1962年8月6日、300年に渡るイギリスの統治のイギリス連邦の中で完全な主権を持つ独立国になったとはいえ、同時に英連邦王国のため、ジャマイカ国王の地位は名目的にイギリス国王と同一人物が兼任してきた。