「身内下げ」が子どもの自己肯定感を奪う
悪口を聞かされて育った子どもはそれが当たり前だと思い成長してしまう(写真はイメージ) itakayuki-iStock
<「自分を下げて見せる」というのは日本に伝わる謙遜文化ですが、「うちの子はダメで」という子どもを下げる表現は子育てでは非常にまずい...我が子を自信減退から守るには、親がポジティブな言葉がけを増やし、自信の補充を行うことが必要です>
「◯◯ちゃんは賢いね」と、ママ友から我が子をほめられた時、日本人の親の多くは、「そんなことないよ、うちの子全然できないよ」「○○ちゃんの方が優秀だよ」と否定します。もちろん親は謙遜しているのですが、横で聞いていた子どもは「ボクは全然できないんだ...」と文字通り受け取ってしまうのです。
脳神経学者のアンドリュー・ニューバーグ博士(Andrew Newberg)とロヨラメリーマウント大学のマーク・ウォルドマン博士(Mark Waldman)の共同研究によって、ネガティブな言葉がストレスホルモンであるコルチゾールを生成すること、そして、ポジティブな言葉がやる気や幸福感を高めるホルモンであるドーパミンを放出させることが分かっています。
謙遜は本来「自分を下げる」ため
「そんなことないですよ」と自己否定し、「自分を下げて見せる」というのは日本に伝わる謙遜文化です。身分制度が複雑化していった歴史の中で、身分の上下関係を明確にするために「相手を上げる」ことに加えて「自分を下げる」という日本独特の表現方法が生まれたと言われています。
謙遜は、本来「自分を下げる」ことが目的だったのですが、いつからか「身内を下げる」に変貌し、一般化していきました。今も日本では、愚妻、愚息、愚弟など、身内のことを「下げて表現する」ことは珍しくありません。
社交辞令として親が自分を謙遜するのは構わないのですが、「うちの子はダメで」「グズで」「勉強が苦手で」「言うこと聞かなくて」「やる気がなくて」と、子どもを「下げる」ことが習慣化すると、子育てでは非常にまずい結果を招くことになります。
冒頭の研究で明らかになっているように、言葉は脳に強い影響を与えます。親が本心でなくても「うちの子はダメ」「うちの子はできない」とネガティブな言葉を聞かせていると、ホルモンの働きによって、本当に子どもからやる気や自己肯定感を奪ってしまうのです。
特に小学校低学年くらいまでの子どもは思い込みが激しい(暗示にかかりやすい)ので、親の言葉で簡単に気分が上がったり、下がったりします。ネガティブな言葉を一切使わないというのは難しいでしょうが、少なくとも子どもの前ではポジティブな言葉、温かい言葉、ほめ言葉を多くすることが大切です。
しかし「◯◯ちゃんは賢いね!」と、我が子をほめられた時、「そうなの、うちの子天才なのよ!」という対応をするのはかなり難しいですね。心の中では「うちの子天才」と思っていても、「そんなことないよ」と否定するのが、日本では人付き合いの礼儀と考えられています。