「同性婚合法化」国民投票が迫るスイス 直接民主制の人びとが選択するのは?
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<同性婚についての対応が国によって分かれる欧州。スイスでは最終的に国民投票で決着することに──>
西ヨーロッパの多くの国で、同性愛者の婚姻が認められている。だが、スイスには、名字や年金や納税などの権利・義務が異性婚と同じになるパートナーシップ制度があるだけだ。国内の同性愛者たちの「なぜ法的に結婚できないのか」という不平等感は高まっており、その不平等を解消しようと、議論の末、スイスの議会は民法改正案を可決した。しかし、これに反対する人たちが多数現れ、合法化は国民投票で問われることになった。投票は、9月26日に実施される。
国内で、精子提供も可能になるか
西ヨーロッパの国で同性愛者に対してパートナーシップ制度しかもたないのは、ギリシャ、イタリア、リヒテンシュタイン、そしてスイスの4カ国だ。スイスでは、2018年より、家族内での養子縁組(パートナーの子どもと養子縁組)は可能だが、ほかの多くの西ヨーロッパ諸国が認めている「他人の子どもとの養子縁組」「生殖補助医療の利用」はできないし、「子どもの誕生時から同性の両親を親として承認」もしてもらえない。
生殖補助医療の利用とは、女性カップルが国内で精子提供を受けることだ。フランスでは、女性カップルが国内で精子提供を受けられる法案が6月に可決されたばかりだ。一方、男性カップルが子をもつハードルはまだ高く、ヨーロッパ諸国の多くは国内の代理出産や卵子提供を禁止している。現在、スイスでは、女性カップルで精子提供を受けたい場合は国外へ行くしかない。男性カップルの場合も、国外での代理出産だ。
スイスにおいて、これらの不平等が解消されることになるかもしれない。スイス政府が同性婚を合法化し、国内で精子提供を受けることやほかの権利も与えることにGOサインを出したからだ。だが、国民投票で否決されれば本法律は施行されない。
そもそも国民投票とは?
この同性婚法「すべての人に結婚を」が国民投票にかけられるのは、スイスが直接民主制の国だからだ。政府の決定に対し、国民の意見を反映させることができる。国民投票するには、一定の署名を集めることが必須だ。スイス国民はこの制度を利用して、生活にかかわる議題を定期的に国民投票で審議している。今回は同性婚ともう1件ある。前回は6月に実施され、化学農薬使用の全面禁止政策、Covid-19法、改正CO2法(温室効果ガスの排出削減に関する連邦法)を含む5件だった。
今回の同性婚法「すべての人に結婚を」は2020年12月に議会で可決され、保守系の2つの党が中心となって同法に反対するための委員会「Nein zur Ehe für alle」を作った。委員会は国民投票実施のため6万1027の有効署名を集めることができた。