「不適切発言をしたらクビ」が常識の、昨今のハリウッド事情
民主党支持者も、差別発言でクビに
カラーノも、バーも、自分たちが受けた仕打ちは民主党支持者からの嫌がらせだと激怒し、反発した。しかし15年間もディズニーのCEOを務めてきたボブ・アイガーは、広告収入を稼いでいる人気番組を諦めてでもバーをクビにすると決めたのは「正しいことをしなければいけなかったから。政治的に正しいか、ビジネス面で正しいかではなく、純粋に正しいことをするべきだったからだ」と述べている。
また、ディズニーは、バーがクビにされたのと同じ2018年、民主党支持者の映画監督も、やはり差別発言のせいでクビにしているのだ。マーベルの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」を監督したジェームズ・ガンである。
ガンの場合、原因となったのは、その頃の発言ではなく、10年ほど前に彼が投稿したツイートだ。それらのツイートで、ガンは、AIDS患者や太った人を差別したり、レイプを肯定しているようなセクハラ的なジョークを書いたりしていた。今さらそれらを持ち出してきたのは、保守派のウェブサイトである。トランプと共和党支持者をツイッターで激しく攻撃してきたガンは、敵によってこんな形で報復を受けたのだ。
その頃、ガンは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」3作目のために作業を進めていたが、マーベルの親会社であるディズニーは、「これらのコメントには弁護の余地がなく、わが社の価値観にそぐわない。したがって、彼とのビジネス関係を断ち切ることにした」と発表し、ガンの準備は無駄になった。
ただし、ずいぶん昔のツイートを持ち出されたことへの同情や、ガン自身が深い反省の言葉を発表したおかげもあってか、それからまもなく、ガンはワーナーに雇われ、今年公開予定の「The Suicide Squad」を監督している。その後には、これから製作が始まる「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」3作目にも、結局、再び雇われた。
「#MeToo」以降、大きく変化した
これらの動きは、2017年秋に起きた「#MeToo」とも無関係ではない。セクハラも、差別発言も、相手を軽んじ、傷つける行為だ。そこには被害者が存在する。そのような行動を、会社や組織は許してはならないという認識が常識化した。
「#MeToo」でも、ディズニー及びピクサーのトップだったジョン・ラセターや、アマゾン・スタジオズを立ち上げたロイ・プライスなど、「まさかこの人がこの会社からいなくなるの?」と思われる大物が、ばっさりと切られた。
だからこそ、変化が目に見え、人に希望を与えたのである。それが誰であっても特別扱いをせず、平等に処分してこそ、本気度が証明できるというもの。そうやって、正しい理念を行動でも示すことは、組織や会社が時代に乗り遅れず、生き残る上で、絶対に必要なことなのだ。
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