ミレニアル世代の赤ちゃんを狙う星占いブーム
What’s Your Sign, Baby?
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<占い好きなミレニアル世代の親をターゲットに、アメリカの出版社はこぞって乳幼児向けの占星術本を刊行中>
ジュリー・マティシクの3歳になる娘は、まだ字が読めない。でも、自分が魚座であることは知っている。「この子は誰にでも聞くの。『何座なの?』って」と、マティシクは言う。
幼稚園でもテレビの子供向け番組でも、星占いのことは教えられていない。でも最近、書店には乳幼児向けの星占い本が競い合うように並んでいる。マティシクも出版社ランニング・プレスの編集者として、そんな本を担当した。
このブームの源は、ミレニアル世代が星占い好きであることだ。現在20代前半から30代後半のミレニアル世代は、まさに出産適齢期。占星術アプリや星占い情報が大好きなこの年代の親は、わが子にも星占いの魅力を教えたがるのではないか──出版社はそこに目を付けた。
クロニクル・ブックスは8月、星座別の「リトル・ゾディアック」シリーズ12巻を刊行。ダブルデイも最近、「ベビー・アストロジー」シリーズ12巻の配本を終えた。
この1年に出版された乳幼児向け星占い本は、相当な数に上る。ランニング・プレスでマティシクが担当した『私の最初の星占い』や、スターリングの「マイ・スターズ」シリーズ、インプリントの『マインド・ボディー・ベビー:占星術』など、どれも0 歳から3〜4歳向けの絵本だ。
著者や編集者は、乳幼児が12の星座を全て覚えられるとは思っていない。もちろん、本を買ってくれるのが乳幼児だとも思っていない。
「児童書はどれも、大人が子供に与えることを想定して作られる」と語るのは、インプリントの発行人を務めるエリン・スタイン。クロニクル・ブックスの編集者で「リトル・ゾディアック」シリーズを担当したダリア・ハーパーは「どんな絵本も大人が幼い子に読み聞かせるものだから、それぞれのパートで子供と親の両方にアピールする要素を考えて、バランスを取らなくてはいけない」と言う。
子供は誕生日が大好き
ハーパーによれば、彼女の会社は子供向けの星占い本に力を入れている。営業部門から「乳幼児に星占い?」という戸惑いの声は上がったものの、「疑似科学」を小さな子供に教えていいのかという真正面からの反対意見はほとんどなかった。「10年前だったらこうはいかなかったかもしれない」と、ハーパーは言う。
今はこうした本を試す絶好のタイミングだと、スタインは言う。星占いやその他のニューエイジ関連ジャンルが社会的に認められてきたこともある。おまけに最近は、乳幼児向けに編集された古典文学の要約本や、量子物理学のような高度な内容を教える絵本など、しばらく前なら出版が難しかったような児童書が流行している。